マガダ国

マガダ国：古代インドの強国とその歴史

マガダ国は、紀元前682年から紀元前185年にかけて、そしてグプタ朝時代（約319年～500年）に栄えた古代インドの強国です。現在のビハール州周辺、ガンジス川下流域に位置し、十六大国の一つとして名を連ねます。鉄器時代初期の発展を遂げ、やがてインド全土を統一するマウリヤ朝を輩出するなど、インドの歴史において重要な役割を果たしました。首都は当初ラージャグリハ（王舎城）でしたが、後にガンジス川沿いのパータリプトラ（華氏城、現在のインド・パトナ）に移されました。

マガダ国の隆盛：地理的優位と独特の社会構造

マガダ国の発展には、地理的条件が大きく貢献しました。ガンジス川による水運、豊富な森林資源、そして当時インド最大の鉄鉱石産地であったことは、経済的繁栄の基盤となりました。しかし、マガダ国の社会構造は、当時のインド社会の主流とは異なっていました。身分制度が比較的緩やかで、奴隷人口が少なかったことが知られています。このことは、ガンジス川上流のアーリア部族社会からしばしば批判の対象となり、マガダは「キーカタ」という軽蔑的な呼び名で呼ばれることもありました。これは、マガダがアーリア部族の影響力の及ばない地域であったこと、伝統的なバラモン教の規範が弱かったことと関係していると考えられます。

王朝と支配者の系譜：伝説から歴史へ

マガダ国の起源については、バラモン教の文献に伝説的な記述が残されています。クル族の大王ヴァスの息子、ブリハドラタが建国したブリハドラタ朝が始まりとされています。この王朝からは、『マハーバーラタ』にも登場するジャラーサンダ王やサハデーヴァ王といった著名な人物が輩出されました。

その後、ビンビサーラ王やアジャータシャトル王といった強力な支配者のもとでマガダ国は勢力を拡大し、隣国アンガ国を征服するなど版図を拡大しました。ビンビサーラ王は仏教の釈迦にも関連する人物として知られています。ウダーイン王は首都をラージャグリハからパータリプトラに移転させました。この都市は後に全インドの中心地として発展していきます。

シシュナーガ朝、ナンダ朝と続き、紀元前4世紀に成立したナンダ朝は、インド最初の統一帝国を築いたマウリヤ朝の礎を築きました。マウリヤ朝のチャンドラグプタ Maurya、そしてその孫であるアショーカ王（阿育王）の治世には、インド亜大陸はほぼマウリヤ朝の支配下に置かれました。マウリヤ朝滅亡後も、シュンガ朝、カーンヴァ朝とマガダ国の歴史は続きますが、最終的には南インドのサータヴァーハナ朝に滅ぼされたとされています。

グプタ朝への継承：新たな黄金時代

西暦320年（グプタ紀元）、マガダ地方からチャンドラグプタ1世がグプタ朝を興しました。パータリプトラを首都とするグプタ朝は、新たな黄金時代を築き、インド文化の隆盛に貢献しました。マガダ国は、その歴史を通じて、インド統一への道筋を開き、幾多の王朝を輩出し、インドの歴史に大きな足跡を残したのです。

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* ナーランダ僧院

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