韓国の芸能界における校内暴力告発議論

韓国芸能界における校内暴力告発議論（学暴MeToo）

韓国芸能界で広く認知されるようになった校内暴力告発議論は、主に2021年以降に加速した動きです。これは、学生時代に経験したとされるいじめや暴行といった「学校暴力」について、被害を訴える人々が主にSNSなどを通じて著名人を告発する運動と、それに伴う様々な影響や議論を指します。世界的な#MeTooムーブメントから派生したこの現象は、「学暴MeToo」、あるいは略して「学Too」「暴Too」とも通称されています。

運動の経緯と広がり

この告発運動は、2017年頃から断続的に存在していましたが、特に注目を集め急速に拡大したのは2021年に入ってからです。大きな契機の一つとなったのは、同年2月に東京五輪に出場予定だった韓国女子バレーボール代表で人気選手だったイ・チェヨン、ダヨン姉妹に対する過去のいじめ疑惑が明らかになったことです。この件以降、同様の告発が連日のように報じられるようになり、多数の芸能人やスポーツ選手が学生時代の問題行動を指摘される事態となりました。例えば、2021年2月23日には一日に6件もの新たな告発が寄せられ、同年中には約40名の芸能人と10名以上のスポーツ選手がこうした疑惑に直面したと伝えられています。

この動きは単なる一過性のブームにとどまらず、2024年現在に至るまで、韓国芸能界ではいじめや校内暴力の告発が少なからず続いており、中には2021年に浮上した疑惑で、未だにその真偽が曖昧なままとなっているケースも存在します。

具体的な告発事例

「学暴MeToo」の告発を受けた芸能人や著名人は多岐にわたり、その後の対応や結果も様々です。大きく分けて、以下のようなケースが見られます。

疑惑を認め、謝罪や活動自粛に至った事例
学生時代の疑惑が持ち上がり、本人や所属事務所が事実関係を認めて謝罪し、活動休止やグループ脱退に至ったケースです。バンドJannabiの元メンバーであるユ・ヨンヒョン氏は2019年に、Block B|Block_Bのパク・キョン氏は2020年に、それぞれ暴行や金品巻き上げ疑惑を認め謝罪文を発表しました。歌手のチン・ダレ氏やStray Kids|Stray_Kidsのヒョンジン氏、俳優のキム・ドンヒ氏、俳優のジス氏、そして元ATBOのヤン・ドンファ氏なども、疑惑の一部または全てを認めて謝罪し、出演番組の降板や活動自粛、グループ脱退などの措置を取りました。

疑惑を否定したが、活動に影響が出た事例
本人や所属事務所が告発内容を否定したものの、社会的な批判や疑惑の長期化によって活動に影響が出たケースです。例えば、元(G)I-DLEのスジン氏や女優のパク・ヘス氏などは、疑惑を強く否定しましたが、活動を中断せざるを得ない状況となりました。ITZYのリア氏や女優のシム・ウヌ氏、俳優のドンハ氏なども疑惑を否定し法的措置を検討・実行しましたが、捜査の結果が不起訴であったり、真偽不明なまま収束したりと複雑な経過をたどっています。多数の著名人が否定声明を発表しましたが、一度浮上した疑惑の火種が完全に消えず、イメージに影響を与える結果となっています。

後に虚偽または誤解であったことが判明した事例
告発者自身が投稿内容が虚偽であったと認め謝罪したり、当事者間の話し合いによって誤解であったことが判明したりしたケースも複数確認されています。俳優のチョ・ビョンギュ氏や元今月の少女のチュウ氏・ヒョンジン氏、THE BOYZ|THE_BOYZのソヌ氏、EVERGLOWのアシャ氏などに対する疑惑は、後に虚偽や誇張が含まれていたとして告発が撤回されています。MONSTA Xのキヒョン氏やSEVENTEENのミンギュ氏、Apinkのパク・チョロン氏、お笑い芸人のホン・ヒョンヒ氏などに対する疑惑も、調査や話し合いの結果、誤解に基づくものであったことが明らかになり、問題が解決に至っています。

当事者間で和解が成立した事例
疑惑の真偽を明確にしないまま、当事者間の直接的な話し合いによって和解が成立し、問題が収束したケースも存在します。歌手のヒョリン氏に対する2019年のいじめ疑惑は、所属事務所が事実確認中とした後に、告発者との間で和解が成立したと発表されました。

運動がもたらした影響と反応

「学暴MeToo」の動きは、韓国芸能界に広範な影響を与えました。多くの告発事例を受けて、疑惑の対象となった芸能人は出演予定だった番組からの降板や放送分の編集・差し替え、契約していたCMの打ち切りなど、活動に深刻な打撃を受けました。たとえ最終的に疑惑が晴れたとしても、その過程で世間からの厳しい批判に晒され、イメージが低下するなど、様々な形で被害を受ける結果となりました。

この状況を受けて、韓国のドラマ制作現場などでは、出演契約を結ぶ際に校内暴力に関する誓約書の提出を義務付ける動きも出てきており、違反した場合の違約金条項などが設けられるなど、業界全体で問題への対策が進められています。

「学暴MeToo」に対する世間の反応は様々です。韓国国内では告発された芸能人に対する批判的な意見が多い傾向にありますが、海外のファンの中には、疑惑の真偽にかかわらず応援を続ける者や、むしろ擁護する姿勢を見せる者もいます。中には、告発者に対する一方的な非難や、芸能人を過度に擁護する一部過激なファンの言動も見受けられ、複雑な様相を呈しています。

関連する動き

韓国では、「学暴MeToo」以外にも、著名人の家族による詐欺行為などを告発する「빚투（ビットゥー）」（빚=借金 + Me Tooの造語）といった、社会的影響力を持つ人物に対する過去の問題行為を告発する類似の動きが過去に発生しています。これは、有名人に対する厳しい道徳的規範や、SNSの普及による個人間の告発の容易化といった社会的な背景が影響していると考えられます。

「学暴MeToo」は、韓国芸能界における過去の清算を求める動きとして広がり、多くの著名人のキャリアや業界の慣習に大きな影響を与え続けている社会現象です。

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