韓起

韓起：晋の政治家と将軍

韓起（かん き）は紀元前514年に亡くなった中国春秋時代の晋国の政治家・将軍である。彼は姫氏の出身で、韓の姓を持ち、名は起、死後には「宣」の諡号を受けて韓宣子と呼ばれる。韓起は韓厥の庶子であり、当初は当主に相応しい立場にいなかったが、ある出来事によってその運命は大きく変わることになる。

紀元前566年、韓起の嫡兄である韓無忌が致命的な病を患い、当主の座を辞退することを決めたため、韓起は突然韓氏の当主の役割を肩代わりすることとなる。これは、当時の政治状況の中で非常に大きな意味を持つ決定であった。

当主になった韓起は、同年、国の中枢に重要な人物がいなくなった状況に遭遇する。紀元前560年、智罃（ちあん）と士魴（しほう）という正卿・中軍の将が相次いで亡くなり、後任者へと昇進する人事が行われた。その際、韓起は悼公から上軍の将としての任命を受けるが、彼はその役割を辞退し、父の韓厥が後見を務めていた趙武を推挙した。悼公はこの謙虚さに感銘を受け、韓起を趙武の下に位置する上軍の佐に任命する。

この新しい役職を通じて、韓起は趙武と共に国政を担うこととなり、彼の政治家としての能力を試されることになる。特に、紀元前546年、韓起は趙武、羊舌肸（おうぜつき）らと共に晋と楚との和平交渉に尽力し、周辺国との講和を実現する「弭兵の会」を開催するまでに至った。この和平交渉により、多くの国家との関係が改善され、晋国はその利益を享受することができた。

その後、韓起は紀元前541年に趙武が死去した後、正卿・中軍の将としての役割を引き継ぐ。しかし、彼の父である韓厥は清貧な生活を貫いていたため、家産が十分ではなかった。これに韓起は叔向（しゅくこう）に不満を述べるが、叔向はその貧困さを逆に美徳だとし、過去の裕福な家族が滅亡した事例を引き合いに出して彼を励ます。それに対し、韓起は感謝の意を表し、彼のおかげで家計が長持ちすることができたと礼を述べた。

韓起の生涯は、彼の清貧さと道徳的価値観が貴族社会の中で非常に評価される一方で、彼自身の役職が困難であったことを示しています。彼が生きた時代の困難な状況にあっても、彼はその徳を通じて国のために尽くしました。そして、紀元前514年に病によりこの世を去った際には、彼の名と業績は国に記憶され、死後には「宣」の称号を授けられました。彼の高潔さと献身は、後の世においても語り継がれることとなります。

もう一度検索