音楽寺 (江南市)

音楽寺

愛知県江南市村久野町に所在する音楽寺（おんがくじ）は、浄土宗西山派に属する仏教寺院である。山号を琴聲山（きんせいざん）と称し、境内には多くの紫陽花が美しく咲き誇ることから、「あじさい寺」の別名でも広く親しまれている。

特徴

音楽寺の境内には、およそ十五種類、計千二百株にも及ぶ色とりどりの紫陽花が植栽されている。梅雨の季節を迎える毎年六月頃には、これらの紫陽花が見頃となり、華やかな「あじさいまつり」が開催され、県内外から多くの参拝者や観光客が訪れて賑わいを見せる。また、当寺は江戸時代に活躍した遊行僧・仏師である円空（えんくう）が彫刻した仏像を複数所蔵していることでも知られ、その数は十六体を数える。本尊は木造の薬師如来座像である。

歴史

寺に古くから伝わる縁起によれば、音楽寺は元暦元年（一一八四年）、源詠法師によって開かれたと伝えられている。創建当初は大乗院と称されており、飛鳥時代に壬申の乱で功績を挙げた人物とされる村国男依（むらくにおり）にゆかりのある寺院であったとも伝えられている。その後、元応元年（一三一九年）に現在の音楽寺へと名を改めたとされる。

境内の周辺地域で行われた発掘調査からは、奈良時代末期から平安時代初期にかけてのものとみられる布目瓦や風招（ふうしょう）などの遺物が出土しており、この地には古くから前身となる寺院が存在していた可能性が指摘されている。江戸時代中期の元禄二年（一六八九年）には、中興の祖とされる第六世映誉和尚によって金聲山音楽寺と称されるようになったが、その後の大正年間には、第二十一世輝道和尚によって山号が現在の琴聲山へと改められた。

文化財

音楽寺が所蔵する円空仏十六体は、江南市の指定文化財となっている。具体的には、円空仏薬師如来像、円空仏日光菩薩像・月光菩薩像、円空仏十二神将像（戌神を除く十一体）、円空仏護法善神像、円空仏荒神像が含まれる。これら十六体の円空仏は、昭和四十三年（一九六八年）十二月に江南市によって文化財として指定された。円空は延宝四年（一六七六年）頃にこの寺に滞在し、仏像を彫刻したと伝えられている。円空仏に用いられた木材について、年輪年代法を用いた調査が行われた結果、寛文十一年（一六七一年）に伐採されたヒノキであることが明らかとなっており、円空の滞在時期や活動の一端を裏付ける証拠となっている。

これらの円空仏のほか、本尊である木造薬師如来座像や、境内の熱田社に伝わる刀剣なども江南市の指定文化財となっており、出土した瓦といった遺物と共に、境内に建てられた白壁の土蔵造りの建物である村久野区歴史資料館「村国の郷」に収蔵・展示され、一般に公開されている。

所在地・交通アクセス

愛知県江南市村久野町寺町に位置する。公共交通機関を利用する場合、名古屋鉄道犬山線の江南駅より名鉄バスに乗車し、「江南厚生病院」行きのバスで「音楽寺」バス停下車、徒歩一分で到着する。

（参考文献：『日本歴史地名大系 愛知県の地名』平凡社、一九八一）

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