村国男依

村国男依（むらくに の おより）：壬申の乱を勝利に導いた豪傑

村国男依は、飛鳥時代に活躍した人物で、その名は雄依、小依とも記されます。美濃国各務郡を拠点とする豪族、村国氏の出身で、壬申の乱において大海人皇子（後の天武天皇）の側近として、重要な役割を果たしました。

出自と初期の活動

村国氏は、美濃国の有力な豪族であり、『日本書紀』では一貫して「連」の姓で記されています。しかし、『続日本紀』には「村国小依」とあることから、壬申の乱当時はまだ姓を持っておらず、乱での功績によって「連」の姓を授かったという説もあります。男依は、舎人として大海人皇子に仕えていたと考えられています。

壬申の乱での活躍

壬申の乱勃発時、男依は皇子のそばにおり、挙兵の2日前には、和珥部君手、身毛広と共に美濃へ先行するよう命じられました。彼らの任務は、美濃国安八郡の湯沐令である多品治と連携し、同郡を挙兵させることでした。男依らはこの任務を見事に遂行し、美濃の兵3000人を率いて不破道を封鎖しました。男依は急ぎ駅馬で引き返し、伊勢国朝明郡で大海人皇子にその成功を報告、これにより、近江大津宮にいた大友皇子は東国との連絡を遮断され、東国の兵力は大海人皇子の手に帰することになりました。

不破関を制圧し、美濃と東国を勢力下に収めた大海人皇子は、軍を二手に分け、一軍を大和国へ、もう一軍を近江へ向かわせました。男依は、近江方面の軍の将として選ばれました。『日本書紀』では、男依を近江方面軍の主将とは明言していませんが、その後の記述で、近江方面軍を「男依等」と表現していることから、実質的に男依が軍を率いていたと考えられます。

近江に侵攻した男依率いる軍は、息長の横河で大友皇子軍と戦い、敵将の境部薬を討ち取りました。その後も、鳥籠山で秦友足を破り、安河の浜では大勝を収め、社戸大口と土師千島を捕らえました。さらに、近江国府のある栗太郡の兵を破るなど、連戦連勝を重ね、ついに近江京を目前にする瀬田に到達しました。

瀬田橋を挟んで大友皇子軍と激突した男依軍は、激戦の末に勝利し、粟津岡を占領しました。翌日、追撃戦で犬養五十君と谷塩手を討ち取り、大友皇子は自害。こうして、壬申の乱は大海人皇子側の勝利で幕を閉じました。

乱後の処遇とその後

壬申の乱後、『日本書紀』は個人名を挙げて戦後行賞を伝えていませんが、功績のあった者には冠位が与えられ、小山位以上が授けられたとあります。男依もこの恩恵を受けたと考えられます。

『続日本紀』によると、大宝元年には、壬申の乱での功績により、男依は120戸の封戸を賜っています。これは、乱における最大の功績者に対する恩賞でした。しかし、地方豪族出身である男依が中央の要職を占めることはありませんでした。

村国連雄依は、天武天皇5年（676年）7月に死去しました。壬申の乱での功績を称え、贈外小紫の位が贈られました。外位は、地方出身で出自の低い者の功績を顕彰するために設けられた位階と考えられています。

霊亀2年（716年）には、男依の功績を讃え、息子の志我麻呂に田が与えられています。これらの事実は、男依の功績が後世まで称えられていたことを示しています。

関連情報

小説家の倉橋寛は、村国男依を題材とした小説『赤き奔河の如く』を2011年に出版しています。男依の激しい生き様が描かれており、歴史ファンに広く読まれています。

村国男依は、壬申の乱における卓越した軍事的手腕と、その後の功績によって歴史に名を刻んだ人物です。地方豪族出身ながら、その能力と忠誠心は、朝廷に高く評価されました。

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