音響伝送メディアによるIP伝送

音響伝送メディアによるIP伝送とは

音響伝送メディアによるIP伝送は、音波を通信媒体として利用し、IPデータグラムを伝送するプロトコルです。これは、1996年のエイプリルフールにジョークRFCとしてRFC 1926で公開されました。このプロトコルの特徴は、既存のコンピュータのハードウェア（スピーカーとマイク）を活用し、モールス符号を使用してデータを送受信するという点にあります。

概要

このRFCでは、ノートパソコンに搭載されているスピーカーとマイクを使用し、音波を介して無線通信を行う方法が提案されています。具体的には、モールス符号を用いてIPデータグラムを伝送する仕組みを定めています。この文書全体は、ネットワークに関する通常の用語と同じ略語を使いながら、ユーモラスな独自の用語が散りばめられています。

例えば、以下のような用語が用いられています。

AS番号（Acoustic Signature Number）: 音響シグネチャとも呼ばれ、モールス符号の音の周波数を指します。異なるAS番号を使用することで、複数のローカル・アコースティック・ネットワーク（LAN）が共存できるようになっています。

プロトコル詳細

IPデータグラムは、まず4ビットごとに分割されます。分割されたデータは、以下の表に従って文字に変換されます。

4ビット	文字	4ビット	文字
-	-	-	-
0000	a	1000	i
0001	b	1001	j
0010	c	1010	k
0011	d	1011	l
0100	e	1100	m
0101	f	1101	n
0110	g	1110	o
0111	h	1111	p

次に、変換された文字列は、一般的な欧文モールス符号で伝送されます。フレーム開始信号として、まず1文字の「b」（モールス符号：－・・・）が前置されます。その後、変換されたIPデータグラムの文字列が続きます。

伝送されるモールス符号の音の周波数は、送信者の音響シグネチャ（AS番号）として定義されます。異なるLANで通信が行えるように、それぞれのLANは異なるAS番号を使用することが推奨されています。RFCでは、以下の7つの標準的なAS番号が提案されています。

a: 440 ヘルツ
b: 466 ヘルツ
c: 494 ヘルツ
d: 523 ヘルツ
e: 554 ヘルツ
f: 587 ヘルツ
g: 622 ヘルツ

通常の運用では、AS番号「a」である440ヘルツを使用することが想定されています。

技術的側面

このプロトコルは、音波を通信媒体として使用するため、電波のような特別なライセンスや機器を必要としない利点があります。しかし、実際の通信速度や信頼性は、他の一般的な通信プロトコルと比較して大幅に低いと考えられます。これは、あくまでジョークとして提案されたRFCであることを理解する必要があります。

まとめ

音響伝送メディアによるIP伝送は、そのユニークな発想とジョークとしての性質から、ネットワーク技術の歴史における興味深い一例です。このプロトコルは、実用性よりも概念的な面白さを追求したものであり、創造的な技術発想の一例として捉えることができます。

脚注

このプロトコルは実用的なものではなく、あくまでジョークとして提案されたRFCである。

関連項目

A440: ドレミファソラシドの、ラ（Ａ）の音。
音響シグネチャ: 潜水艦などでの音響シグネチャ。
鳥類キャリアによるIP:
* 手旗信号システムによるIP伝送:

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