響 (初代神風型駆逐艦)

駆逐艦 響 (初代)

「響（ひびき）」は、大日本帝国海軍が運用した神風型駆逐艦（初代）の一隻であり、同型艦の21番艦として数えられます。この艦は、日露戦争終結後から第一次世界大戦にかけての時期に整備された駆逐艦群の一翼を担いました。後代の吹雪型駆逐艦にも同名の「響」が存在するため、区別のために本艦は「響 (初代)」あるいは「響I」と表記されることが一般的です。

その艦歴は、1905年（明治38年）2月15日に「製造番号第21号」として命名されたことから始まります。同年9月28日、神奈川県にある横須賀海軍工廠にて建造が開始されました（起工）。翌1906年（明治39年）3月3日には無事進水を果たし、艦としての形を現しました。艦種として正式に駆逐艦に類別されたのは1906年4月1日のこと。そして、同年9月6日に竣工を迎え、帝国海軍の正式な戦力に加わりました。

竣工後、「響 (初代)」は国内外の様々な任務にあたりました。まず、第一次世界大戦が勃発すると、遥か南方の重要拠点であるシンガポール方面へと派遣され、現地の警備任務に従事しました。これは、当時の日本の南洋地域における権益保護や、連合国側としての海上交通路確保に貢献するものでした。また、第一次大戦終結後、ロシア革命後の混乱期におけるシベリア出兵においては、極東ロシアの沿海州地域における沿岸警備活動を展開しました。不安定な情勢下で日本の権益を守り、邦人保護などの任務を遂行し、帝国の対外的な活動を支えました。

長年にわたり駆逐艦として活躍した「響 (初代)」も、時代の流れとともに艦齢を重ね、その役割を変化させることになります。1924年（大正13年）12月1日付で、掃海艇へとその艦種を変更されました。これは、新たな駆逐艦が次々と建造される中で、既存艦艇を有効活用する海軍の方針に沿ったものでした。しかし、艦体の老朽化は避けられず、掃海艇として数年を過ごした後、1928年（昭和3年）4月1日をもって帝国海軍の艦籍から正式に除かれました（除籍）。

除籍後の「響 (初代)」は、同年7月6日には「廃駆逐艦第11号」という一時的な名称が与えられました。しかし、すでに老朽化が著しく進行していたため、同年10月12日には廃船として認められ、艦としての実質的な命運はほぼ尽きます。そして最終的に、1930年（昭和5年）2月13日に売却され、その波乱に満ちた艦歴に静かに幕を下ろしました。

竣工から退役までの間、「響 (初代)」には多くの海軍士官が艦長あるいは掃海艇長として着任し、その指揮を執りました。彼らの手腕の下、本艦は様々な任務を遂行し、明治末期から昭和初期にかけての激動の時代における帝国海軍の一員として、その役割を果たしたのです。

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