項劉記

『項劉記』は、1993年に光栄（現コーエーテクモゲームス）から発売されたPC-9801用歴史シミュレーションゲームです。古代中国の楚漢戦争を題材とし、プレイヤーは項羽または劉邦のいずれかの勢力を選択し、もう一方の勢力の打倒を目指します。

ゲームの特徴

勢力の個性化: 項羽と劉邦は、能力値や人材登用の傾向、特定のコマンド成功率などに違いがあり、それぞれ異なる戦略が求められます。項羽は戦闘能力に優れるものの、支持率が低く離反しやすいという特徴を持ち、劉邦は戦闘能力こそ低いものの、多様な人材を抱え、外交や人材発掘に秀でています。
行軍戦闘システム: 本作では、従来の光栄作品とは異なり、軍団単位で武将や兵士を編成し、自由に行軍させて戦闘を行う「行軍戦闘」システムを採用しています。各都市は軍団の補給基地としての役割が強く、内政よりも戦闘と補給が重視されています。
戦略性の高い戦闘: 戦闘では、「伏兵移動」や「ユニットの向きによる防御補正」、「水攻め」、「夜襲」など、さまざまな要素が盛り込まれており、戦略的な判断が勝敗を左右します。
内政の重要性: 内政の比重は低いものの、都市の「支持率」や君主の「敬慕度」を維持しなければ、都市の離反や武将の離反、新規登用が不利になるため、適切な内政も必要です。
* 人材の好悪: 人材には、項羽と劉邦に対する「好悪」が明確に設定されており、特定の武将は特定の勢力にしか登用できないため、史実の人材分布が反映されやすいです。

ゲームの流れ

ゲームは、秦の滅亡後に項羽と劉邦がある程度の勢力を築いた状態から始まります。プレイヤーは、与えられた4つのシナリオの中から一つを選択し、自勢力の拡大を目指します。シナリオは、史実に基づいた以下のようなものがあります。

1. 前206年 漢中王即位す
2. 前205年 項 義帝を弑す
3. 前204年 劉 項 広武に対す
4. 前203年 項 楚歌に涙す

各シナリオで選択できる勢力は、項羽率いる「楚」または劉邦率いる「漢」のみですが、他にも独立勢力が存在します。項羽は、全武将中最強の「戦闘」値を誇り、強力な軍隊を有していますが、支持率が低いため、同盟や支配下においても離反されやすいリスクがあります。劉邦は、戦闘能力は低いものの、多様な人材が揃っており、家臣に戦闘を任せ、自身は外交や人材発掘に専念することができます。

音楽

音楽は、映画やテレビドラマの劇伴などを手掛けている音楽プロデューサーの長谷川智樹が担当しています。サウンドトラックは、1993年にCDで発売されており、ゲームの世界観を盛り上げています。特に有名な曲として、項羽のテーマである「威風」や、劉邦のテーマである「赤龍」などがあります。

他機種への展開

本作は、PC-9801版の発売後、FM TOWNS、X68000、スーパーファミコン、PlayStationなど、さまざまな機種に移植されました。特にスーパーファミコン版は、北米で『Rise of the Phoenix』というタイトルで発売され、海外でも人気を博しました。

評価

スーパーファミコン版は、ゲーム誌で一定の評価を得ましたが、ゲームとしての深みや奥行きに欠けるという指摘もありました。しかし、楚漢戦争という歴史的な舞台を背景に、項羽と劉邦の対立を描いた本作は、多くの歴史シミュレーションゲームファンに支持されています。

まとめ

『項劉記』は、楚漢戦争を題材にした歴史シミュレーションゲームとして、その独自のシステムや勢力の個性化が特徴です。内政よりも戦闘に重点を置いたシステムは、従来の光栄作品とは異なるプレイ感を提供しています。戦略と戦術を駆使し、項羽または劉邦として天下統一を目指すというゲームプレイは、多くのプレイヤーを魅了しました。

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