項荘

項荘の歴史的背景と鴻門の会での役割

項荘（こうそう、生没年不詳）は、中国史に名を刻んだ楚の武将で、秦末から前漢初期にかけて活躍しました。彼は有名な武将項羽の従弟であり、彼の軍勢の一員として戦いました。項荘はその生涯の中で、特に鴻門の会において重要な役割を果たしました。

諸将と一緒に戦った日々

高祖元年（紀元前206年）12月、項羽は彼の指揮のもと、函谷関を突破し、戯水の西に位置する戯西に陣を構えました。この時に、項荘は指揮官の一人として、項羽の元で従軍していました。項羽は参謀の范増の勧めで、当時覇権を握る劉邦に対する攻撃を決定しました。

この攻撃の準備の一環として、項羽の叔父である項伯が、劉邦との和解の仲介に動きました。劉邦は項羽が控える鴻門に謝罪に赴き、そこで「鴻門の会」が開かれることとなります。この会では項羽、項伯、范増、劉邦、そして劉邦の参謀である張良が一堂に会し、酒宴が盛大に行われました。

殺害計画の実行

鴻門の会の最中、項羽が劉邦を殺そうとしない様子を見た范増は、項荘を呼び寄せ、彼に計画を伝えました。范増は、「君王（項羽）は人に対して非情ではないが、君も積極的に行動しなければならない。寿を祝った後に剣舞をするように頼み、劉邦を斬るのだ」と指示しました。

項荘はその言葉に従い、項羽の前で祝言を述べました。「君王は沛公（劉邦）と共に酒を飲んでいるが、軍中には楽しさがありません。剣を舞わせていただいてもよろしいでしょうか？」と尋ねました。項羽がこれを承諾すると、項荘は剣を手に持ち舞い上がりました。彼の意図を察知した項伯は、即座に剣を抜き、劉邦の護りとなりました。そのため、項荘は劉邦を斬ることができませんでした。

逃走する劉邦

項荘の暗殺計画は失敗に終わり、会の場に残っていた張良は外にいる樊噲を呼び寄せました。樊噲が乱入する間に、劉邦は厠に行くふりをして逃げ出しました。この出来事により、項荘は劉邦を殺害できず、計画は完全に崩壊しました。

策略の失敗と范増の嘆き

その後、范増は張良から貰った贈り物の玉斗を叩きつけて壊し、「小僧は計略を共にすることができない。項王の王国を奪うのは必ず沛公であろう。我々はこのまま捕虜になってしまうだろう」と嘆きました。この発言は、范増が項荘の失敗を悔やんでいることを示しています。彼は項荘の無能が取り返しのつかない結果を招いたと考えたのです。

最後の姿

その後、項荘に関する詳細な記録は残っていません。彼のその後については多くの謎が残されており、歴史の流れの中で消えていったと考えられています。奥崎裕司は、范増の「豎子（小僧）よ」という言葉は、暗殺計画を失敗した項荘を指し示していると解釈しています。このように、項荘の人生は彼の従兄弟である項羽と共に歴史の影に埋もれてしまいました。

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