須摩洋朔

須摩洋朔：軍楽の道を極め、自衛隊音楽の礎を築いた多才な音楽家

須摩洋朔（すま ようさく）は、1907年（明治40年）に石川県で生まれ、2000年（平成12年）に生涯を閉じた日本の軍人、自衛官、作曲家、指揮者、トロンボーン奏者です。旧陸軍では軍楽大尉、自衛隊では1等陸佐の階級にありました。音楽家としては、明石丈夫（あかしたけお）、築地洋（つきじひろし）、七海富夫といった別名も用いていました。

軍楽隊でのキャリア

須摩は1925年（大正14年）に陸軍戸山学校に入校し、首席で卒業後、同校の軍楽隊でトロンボーン奏者として活動しました。1942年（昭和17年）には南方軍軍楽隊の一員となり、泰緬鉄道開通式などの式典に参加しました。1944年（昭和19年）には第2方面軍軍楽隊長に任ぜられますが、フィリピンで負傷。その後、南方軍軍楽隊が再建されると副隊長、そして隊長を務め、終戦を迎えました。

自衛隊音楽隊の創設

戦後、須摩は日本交響楽団（現在のNHK交響楽団）のトロンボーン奏者として活動した後、警察予備隊音楽隊、保安隊音楽隊、そして陸上自衛隊中央音楽隊の創設に尽力しました。これらの音楽隊で初代隊長を務め、自衛隊の音楽文化の礎を築きました。

1951年（昭和26年）に警察予備隊に音楽隊が設置される際、須摩は楽長として採用され、自ら隊員選考試験を作成し、45名の隊員を選抜しました。同年6月には警察予備隊音楽隊が正式に編成され、8月には初の公式演奏会を開催、その後、全国各地で演奏ツアーを行いました。

1952年（昭和27年）には音楽隊創設一周年記念音楽祭で自作曲「大空」が演奏され、これが定期演奏会の始まりとなりました。同年には、儀礼曲「栄誉礼：栄光」と「巡閲の譜」も発表されました。その後、音楽隊は保安隊音楽隊、陸上自衛隊中央音楽隊と改称し、須摩は初代隊長として1962年（昭和37年）に退官するまでその職を務めました。

多様な音楽活動

1960年（昭和35年）にはローマオリンピック視察団に加わり、ヨーロッパ各国の軍楽隊を訪問。1961年（昭和36年）にはフランスのギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の客演指揮を務めました。1964年（昭和39年）の東京オリンピックでは音楽演出を担当し、表彰式で各国国歌を18秒に編曲しました。退官後は武蔵野音楽大学の講師も務めるなど、多岐にわたる活動を続けました。

主な作品

須摩は、数多くの楽曲を作曲・編曲しました。主な作品には、以下のものがあります。

行進曲「大空」：陸上自衛隊制式行進曲。
祝典ギャロップ：陸上自衛隊制式行進曲。
栄誉礼冠譜「栄光」：旧陸海空自衛隊制式儀礼曲。
巡閲の譜：陸海空自衛隊制式儀礼曲。
各種らっぱ譜：陸上自衛隊制式らっぱ譜。
防衛大学校 学生歌
金沢工業大学校歌
富来高等学校校歌
富来中学校校歌
愛馬進軍曲（編曲）

これらの楽曲は、現在も自衛隊の式典や演奏会で広く用いられ、日本の音楽文化に深く根付いています。

須摩洋朔は、軍楽隊での経験を活かし、自衛隊の音楽文化の基礎を築いた偉大な音楽家でした。彼の功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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