須藤正彦

須藤正彦：卓越した法律家、最高裁判事としての足跡

須藤正彦（すどう まさひこ）は、1942年12月27日に生まれ、2016年11月5日に逝去した、日本の著名な弁護士です。最高裁判所判事を務めた後、東京電力ホールディングスの取締役にも名を連ねました。彼の法律家としての道のりは、栃木県足利市から始まりました。

生涯と業績

栃木県立足利高等学校、中央大学法学部法律学科を卒業後、1970年4月に弁護士登録を行い、みなと協和法律事務所に所属しました。彼は法学博士でもあります。東京弁護士会副会長、財団法人法律扶助協会常務理事、最高裁判所司法研修所教官（民事弁護）、日本弁護士連合会綱紀委員会委員長、東京都労働委員会公益委員、国際医療福祉大学客員教授など、数多くの要職を歴任しました。また、そごうグループの民事再生申立代理人や、日本長期信用銀行の内部調査委員も務めるなど、多岐にわたる分野でその能力を発揮しました。

2009年12月28日、67歳で最高裁判所判事に就任。この年齢での最高裁裁判官就任は、三淵忠彦、奧野久之に次いで3人目でした。最高裁判所裁判官国民審査は、就任後の衆議院議員総選挙と同時に行われますが、須藤氏の場合は、衆議院議員の任期満了日よりも定年退官予定日が8ヶ月も前でした。そのため、政界の状況によっては審査を受けずに退官する可能性もありましたが、最終的には国民審査を受け、信任を得ました。69歳356日での国民審査は、歴代最高齢記録です。

定年退官後、後任の人事が遅れ、弁護士出身の鬼丸かおるが就任するまで、最高裁判所の判事の席が41日間空席となる異例の事態も発生しました。2014年4月には旭日大綬章を受章。同年6月には東京電力株式会社および東京電力ホールディングス株式会社の取締役に就任しました。

主な裁判

須藤正彦が関わった裁判は多岐にわたります。以下に主なものを紹介します。

大分替え玉保険金殺人事件上告審判決（2010年）: 一、二審の死刑判決を支持し、上告を棄却しました。
武富士創業家の贈与税訴訟（2011年）: 課税を違法とした東京高裁判決を破棄し、国に1,330億円の追徴取り消しを命じる逆転判決を下しました。
君が代斉唱不起立再雇用拒否訴訟（2011年）: 「職務命令には必要性と合理性がある」として、上告を棄却しました。
高知白バイ衝突死事故損害賠償訴訟（2012年）: 元バス運転手が訴えた損害賠償請求を棄却しました。

著書・論文

須藤正彦は、法律に関する著書や論文も多数発表しています。以下はその一部です。

『ゴルフ会員権の譲渡に関する研究 - 契約上の地位の譲渡の一態様として』（信山社、1992年）
『精説不良債権処理 - 引当・償却とデット・エクイティ・スワップ、証券化』（経済法令研究会、2004年）
共著：『注解破産法』（第1版、青林書院）
共著：『民事実務読本I』（東京布井出版）
共著：『民事執行の基礎と応用』（青林書院）
論文：「義務償還株式」（『最新倒産法・会社法をめぐる実務上の諸問題』）
論文：「ヘルパー派遣における高齢者の救済手続」（『民事司法の法理と政策下巻』）
論文：「ABLの2方面での役割と法的扱い」（NBL879号）

須藤正彦は、その卓越した法律知識と経験をもって、日本の法曹界に大きな足跡を残しました。彼の業績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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