頭上運搬

頭上運搬：人類の知恵と文化

頭上運搬とは、人が荷物を頭に載せて運ぶ方法です。世界各地で古くから見られ、特に女性によって行われることが多いとされています。単に荷物を頭に載せるだけでなく、容器を使用したり、荷物と頭の間に輪を挟んだり、天秤棒を頭に載せるなど、様々な工夫が見られます。

運搬方法としては、荷物や容器を頭頂部に直接載せる方法と、帯を額（前頭部）にかけて支える方法があります。これらの方法は、運ぶ荷物の種類や量、運搬する人の体格や体力、そして地域の文化や習慣によって選択されてきました。

効率的な運搬方法としての頭上運搬

Ray Lloydらの研究によれば、熟練した人は、頭に載せるものの重量が体重の20%までであれば、通常の歩行と比べてエネルギー消費を増加させずに運搬できるとされています。しかし、それ以上の重い荷物や速い速度での運搬には、背中に荷物を載せて運ぶ方が効率的であると結論付けています。この研究は、頭上運搬が一定の条件下においては非常に効率的な運搬方法であることを示唆しています。

歴史の中の頭上運搬

日本における頭上運搬

日本では、中世の絵巻物である一遍上人絵伝や北野天神縁起などに、頭上運搬の様子が描かれています。また、京都の大原女や白川女といった女性商人が、柴・薪・花を頭に載せて売りに来る姿は、日本の風物詩として知られていました。近世以降、頭上運搬は廃れる傾向にありましたが、近代でも西日本の海沿いの地域には伝統が残っていました。この運搬法は、地域によってイタダク、ササグなど様々な名前で呼ばれていました。アイヌの人々は、荷物を背負う際に背負い袋や背負子に取り付けた荷縄を額で支える方法を用いていました。沖縄では、ティルと呼ばれる竹籠を頭上に載せて運搬する習慣があり、国領地方ではティルの紐を前頭部に引っ掛け、荷は背に載せるという独特の方法が見られました。

ヨーロッパにおける頭上運搬

北西ヨーロッパでは、中世に女性が重く持ちにくいものを運ぶ手段として頭上運搬が用いられていました。少なくとも14世紀まではこの習慣があったことが確認されていますが、19世紀中盤までにはほとんど見られなくなりました。

頭上運搬は、単なる運搬方法としてだけでなく、その土地の文化や歴史を反映した生活の知恵として、世界各地で多様な形で受け継がれてきました。今日では、その実用性だけでなく、文化的な側面からも再評価されています。

参考資料

東京国立博物館所蔵『月次風俗図屏風』 - e国宝（国立文化財機構）(3枚目に頭上運搬をする人々が描かれています。)
検索ワード：頭上運搬 - 朝鮮写真絵はがきデータベース（国際日本文化研究センター）

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