頭蓋咽頭腫

頭蓋咽頭腫：稀な良性脳腫瘍とその特徴

頭蓋咽頭腫は、良性腫瘍でありながら、その発生部位や症状の複雑さから、治療に高度な専門性を要する脳腫瘍です。原発性脳腫瘍全体のわずか3％程度と稀な存在ですが、小児脳腫瘍の中では比較的高頻度に見られ、約9％を占めます。年齢を問わず発症する可能性がありますが、特に小児における発生率が高くなっています。

頭蓋咽頭腫の成因と発生部位

頭蓋咽頭腫は、胎児発生期における頭蓋咽頭管の遺残から生じる先天性腫瘍であると考えられています。頭蓋咽頭管とは、胎生期において脳と口腔を繋いでいた管状構造で、通常は出生前に消失しますが、何らかの要因で残存した場合、頭蓋咽頭腫が発生する可能性があります。

この腫瘍は、下垂体柄と呼ばれる脳の中枢部に位置する重要な部位に発生します。その70％はトルコ鞍（下垂体が入っている骨のくぼみ）内、またはその直上に存在します。

頭蓋咽頭腫の組織学的特徴

頭蓋咽頭腫は、嚢胞を形成することが大きな特徴です。この嚢胞の中には、粘稠性の液体（モーター油に似た外観）とコレステロール結晶が含まれています。また、腫瘍組織中には、砂粒状や結節状の石灰化（石灰沈着）が見られることも多く、画像診断において重要な所見となります。これらの特徴的な組織学的所見は、診断に役立ちます。

頭蓋咽頭腫の症状

頭蓋咽頭腫の症状は、腫瘍の大きさや発生部位、圧迫する周囲組織によって大きく異なります。腫瘍が大きくなると、視神経や視交叉を圧迫し、視力障害（視野狭窄、複視など）を引き起こすことがあります。また、下垂体を圧迫することで、ホルモン分泌異常による様々な症状が現れる可能性があります。例えば、成長ホルモン分泌低下による成長障害（小児の場合）、抗利尿ホルモン分泌低下による多飲多尿、性腺刺激ホルモン分泌低下による性腺機能低下などが挙げられます。さらに、頭痛や嘔吐などの症状が現れることもあります。

頭蓋咽頭腫の診断と治療

頭蓋咽頭腫の診断には、MRIやCTなどの画像診断が用いられます。これらの検査によって、腫瘍の位置、大きさ、特徴を詳細に調べることが可能です。また、必要に応じて、血液検査によるホルモンレベルの測定も行われます。

治療法としては、手術による腫瘍摘出が第一選択となります。しかし、腫瘍の発生部位や周囲組織との癒着などにより、完全な摘出が困難な場合もあります。手術が困難な場合や再発した場合は、放射線治療が検討されます。近年では、内視鏡手術の進歩により、より侵襲の少ない手術が可能になってきています。

まとめ

頭蓋咽頭腫は、稀な良性脳腫瘍ですが、その発生部位や症状の複雑さから、専門的な診断と治療が必要です。早期発見と適切な治療によって、予後を良好に保つことが重要です。もし、関連する症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。

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