頼桃三郎

頼桃三郎：近世浄瑠璃研究の泰斗、学問一家を築いた生涯

頼桃三郎（1910年-1992年6月）は、近世浄瑠璃研究で知られる著名な国文学者です。広島大学名誉教授として後進の育成にも尽力し、その学問的貢献は広く認められています。

頼氏は、歴史に名を残す頼山陽の血筋を受け継いでいます。広島県竹原市に生まれ、名門の血筋と伝統の中で育ちました。第三高等学校を経て東京帝国大学国文科を卒業後、大学院に進学。その後、1939年から1945年にかけてNHK東京放送局に勤務し、放送文化にも貢献しました。

1949年、広島大学教育学部分校に着任。教育者としての道を歩み始めます。1953年から1963年までは広島大学三原附属中学校・高等学校の校長職を務め、教育現場の第一線で指導力を発揮しました。その後、広島大学教授に就任。1974年に定年退官するまで、後進の育成に尽力し、大学から名誉教授の称号を贈られました。退官後も安田女子大学教授として、教育活動を続けました。

頼氏の専門は近世浄瑠璃。その深い知識と鋭い洞察力は、多くの研究者から高く評価されています。数々の著作を発表し、近世浄瑠璃研究に多大な貢献を果たしました。代表的な著書として、『十菊随筆』『詩人乃手紙 近世文壇史話』『去年の雪』『十菊新抄』などがあります。さらに、『浄瑠璃集成』の校訂などにも携わり、近世文学の理解を深める上で重要な役割を果たしました。岩波文庫で刊行された近松門左衛門作品等の校訂は、現在でも広く利用されています。

頼氏の学問への情熱は、家族にも受け継がれています。息子である頼祺一氏も広島大学名誉教授として、父と同じく教育・研究に携わっています。中国文学者の頼惟勤氏とは遠い親戚にあたりますが、この家系には学問を重んじる伝統が脈々と受け継がれていることがうかがえます。

頼桃三郎の生涯は、学問への飽くなき探究心と、教育者としての深い責任感、そして豊かな人間性を示すものでした。近世浄瑠璃研究における功績は、現代の研究者にとっても大きな影響を与え続けており、その名声は今後も不滅のものとなるでしょう。その学問的業績と、教育者としての足跡は、後世に語り継がれるに値するものです。頼桃三郎という名は、日本の国文学、特に近世浄瑠璃研究の歴史に深く刻まれています。

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