頼梅颸

頼梅颸（らい ばいし）

頼梅颸（1760年 - 1844年）は、江戸時代後期に活躍した歌人です。儒学者である飯岡義斎の娘として大坂に生まれ、その才能を開花させました。夫は儒学者の頼春水、息子は著名な歴史家・思想家の頼山陽であり、母として、妻として、歌人として多岐にわたる影響を与えました。

生涯

梅颸は、幼少の頃から学問に励み、特に文章や和歌の才能に秀でていました。京都の歌人、小沢蘆庵に師事し、歌道に磨きをかけました。20歳で頼春水と結婚。夫の父である頼惟清と京都を遊覧した際の紀行文『遊洛記』は、彼女の代表作として知られています。その後、春水が広島藩に仕えることになり、一家で広島へ移住。多忙な日々の中で、家事や育児をこなしながらも、歌道への情熱を絶やすことはありませんでした。

梅颸日記

梅颸が書き残した『梅颸日記』は、天明5年（1785年）から亡くなるまで、59年間にわたって綴られた貴重な記録です。夫の春水が江戸に勤番で不在の間、留守中の頼家の様子を伝える目的で書き始められましたが、次第に日々の出来事や心情、旅行の際の紀行文や和歌などが書き加えられるようになりました。この日記は、当時の社会情勢や風俗、儒学者たちの生活を知る上で重要な資料となっています。

頼山陽との関係

梅颸は、息子である頼山陽の教育に深く関わりました。山陽が12歳の時、素行が悪く、学問を疎かにしていたため、梅颸は心を痛めました。しかし、梅颸は山陽の才能を信じ、辛抱強く教育を続けました。山陽が家出騒動を起こした際には、幽閉された山陽を励まし、学問への情熱を呼び起こしました。山陽は母の期待に応え、後に『日本外史』を著し、歴史家・思想家として名を馳せました。

山陽は母への感謝の念を生涯忘れず、梅颸の死後には、その遺徳を偲ぶ文章を多く残しています。山陽の成功は、梅颸の教育の賜物であると言えるでしょう。

その他の家族

梅颸は、山陽以外にも二男一女をもうけました。長女の頼三穂は、広島藩士の進藤吉之助に嫁いでいます。また、山陽の息子である頼聿庵を育て、その教育にも尽力しました。梅颸は、頼家の子孫たちの育成に力を注ぎ、その功績は後世まで語り継がれています。

晩年

晩年は、息子・山陽に先立たれるという悲しみを経験しました。73歳で山陽が亡くなった後も、梅颸は気丈に生き、頼家の子孫たちの成長を見守りました。天保14年（1844年）、84歳で波乱の生涯を閉じました。墓所は広島市の多聞院にあり、夫・春水の隣に静かに眠っています。

評価

頼梅颸は、歌人として、教育者として、そして妻として、多才な才能を発揮し、多くの人々に影響を与えました。彼女の残した『梅颸日記』は、江戸時代の貴重な資料として、今もなお研究されています。また、息子・頼山陽を育て上げた母としての功績も高く評価されており、彼女の教育方針や子育ての姿勢は、現代の私たちにとっても学ぶべき点が多くあります。

頼梅颸は、日本の歴史に名を残した偉大な女性の一人です。

もう一度検索