顕粛皇后

顕粛皇后（けんしゅくこうごう）は、北宋の皇帝、徽宗（きそう）の皇后です。彼女の生涯は、低い身分から皇后へと上り詰めた波乱に満ちたものでした。

出自と入宮

鄭氏は、元々欽聖皇后（徽宗の嫡母）の侍女として仕えていました。しかし、その美貌と非凡な詩才により、当時の端王、後の徽宗に見出され、側室となります。低い身分からの入宮でしたが、徽宗の寵愛を一身に受けました。

立后

端王趙佶が皇帝に即位すると、鄭氏はその寵愛を受けて、才人、嬪、貴妃と順調に位を上げていきます。そしてついに、政和元年（1111年）に皇后に立てられました。これは、彼女の美貌と才能、そして何よりも徽宗の深い愛情の賜物でした。

皇后として

皇后として、鄭氏は多くの女子を産みました。彼女の父である鄭紳は、元は地方官でしたが、娘が皇后となったことで太師に任じられ、楽平郡王に封じられました。これは、皇后の地位が家族にもたらす影響の大きさを物語っています。

靖康の変とその後

宣和7年（1125年）、徽宗が譲位し、欽宗が即位すると、鄭氏は太上皇后となり、寧徳太后と称されました。しかし、その平穏な日々は長くは続きませんでした。靖康の変が勃発し、金軍によって都が陥落すると、彼女は他の皇族と共に金に連行されるという屈辱を味わうことになります。

金に連行された後、鄭氏は多くの苦難を経験しました。異民族の地で屈辱に耐えながら、故郷を思う日々を送りました。建炎4年（1130年）に異郷の地で亡くなりました。

南宋での名誉回復

南宋において、鄭氏は顕粛と諡（おくりな）されました。紹興12年（1142年）には、徽宗の棺と共に遺骸が江南へ送還され、会稽の永佑陵に埋葬されました。これにより、彼女は皇后としての名誉を回復し、ようやく故郷の土に眠ることができました。

子女

趙玉盤（嘉徳帝姫）
趙金羅（安徳帝姫）
寿淑帝姫
栄淑帝姫
趙瑚児（成徳帝姫）


顕粛皇后の生涯は、美貌と才能を持ちながらも、時代の波に翻弄された女性の悲劇を象徴しています。彼女の物語は、歴史の裏に隠された人々の苦難を今に伝えています。

参考文献

『靖康稗史箋證』
* 『宋会要輯稿』

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