類設計室

株式会社類設計室：多角経営と社会問題

株式会社類設計室は、建築設計を基軸に、教育、農業、宅配、ビルメンテナンスなど多様な事業を展開する、1972年創業の企業です。設立以来、建築設計においては企業・官庁・教育施設などの設計を手掛け、特に教育・研究施設に多くの実績があります。東京大学を始めとする複数の大学との共同研究にも取り組んでおり、環境デザイン、ZEB、木造建築など、先進的な建築技術にも精通しています。

教育事業では、1975年に設立された学習塾「類塾」が中心です。探求学習を取り入れた独自の教育プログラムを提供しており、近年はオンライン授業も開始しています。高い教育理念に基づき、生徒の主体的な思考力と探求心を育む教育を実践しています。

1999年には有機[[農業]]に取り組み、「類農園」を設立しました。奈良県と三重県に自社農場を持ち、有機JAS認証を取得しています。大和野菜などの有機野菜、特別栽培米、有機米、有機茶などを生産し、大阪の直売所や宅配事業を通じて消費者に届けています。農学部教育支援や百貨店との協業、地域ブランド化への参画など、農業分野においても積極的な活動を展開しています。

2015年には宅配事業「類宅配」を開始し、関西を中心にポスティング事業やマーケティング事業を展開。さらに2022年にはビルメンテナンス・清掃・警備業務を行う「類管財」を設立し、建物の長寿命化と資産価値向上に貢献しています。

類設計室は多角的な事業展開を通じて、社会貢献を目指してきました。しかし、その一方で、2001年から2023年まで運営していた投稿型ウェブサイト「るいネット」において、様々な疑似科学や陰謀論を拡散したことが問題視されています。特に、2022年9月まで発行されていたミニコミ紙『週刊事実報道』では、新型コロナワクチンに関する誤情報が掲載され、大阪府内の約58万世帯に配布されました。これらの行為は、社会的な批判を招き、報道機関にも取り上げられました。

類設計室は、2003年から「なんで屋」という露店商風の思想活動も行っていました。小中学生から社会人まで幅広い層が参加し、社会問題について議論するセミナーも開催していました。この活動は、既存の社会システムに対する批判的な視点と、自己中心的思考を促すものでした。

類設計室の歴史においては、2009年以降、数十人の元講師が残業代の支払いを求めた訴訟（類設計室事件）も起こっています。この訴訟では、類設計室の「全員取締役制度」が問題となり、京都地裁は元講師を労働者と認め、類設計室に約1200万円の支払いを命じる判決を下しました。この判決は最高裁で確定し、類設計室は2020年8月からこの制度を廃止しました。

類設計室は、建築設計や教育、農業などの分野で一定の成果を収めてきましたが、ウェブサイトやミニコミ紙における誤情報拡散、残業代不払い問題など、多くの問題を抱えてきました。「全員取締役制度」や「なんで屋」のような独自の取り組みは、革新的な試みとして評価できる面もありますが、同時に法的・倫理的な問題を引き起こしたことも事実です。類設計室の今後の動向、社会との関係性の再構築が注目されます。

類設計室は、建築設計分野では、BCS賞・東京建築賞最優秀賞などを受賞し、月刊『近代建築』、『新建築』、『日経アーキテクチュア』などにも掲載実績があります。これらの実績は、類設計室の建築設計技術の高さを示しています。しかし、社会的な問題と建築設計における優れた実績は、常に相反するものではないことを示唆していると言えるでしょう。

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