風が泣いている

風が泣いている

1960年代後半のグループサウンズブームを牽引した人気グループ、ザ・スパイダースが発表した楽曲「風が泣いている」。この曲は1967年7月15日にシングル盤としてリリースされました。

作詞と作曲は、多くのヒット曲で知られる著名な作曲家・作詞家、浜口庫之助氏が一手に手掛けています。楽曲の大きな特徴として挙げられるのは、導入部分から耳を捉えるドラマチックなストリングス編曲です。まるで緊迫した状況や心の動揺を描写するかのようなその響きは、聴く者に強い印象を与えます。

ザ・スパイダースが人気絶頂期にあったこの時期にリリースされた本作は、メンバーの堺正章氏がリードボーカルを担当し、大衆からの支持を得て大きなヒットとなりました。当時の音楽シーンにおいて、グループサウンズが若者を中心に熱狂的に迎えられていた背景もあり、彼らの代表曲の一つとして数えられる楽曲です。

このシングル盤のB面には、「君にあげよう」という楽曲が収録されています。こちらもA面同様、浜口庫之助氏が作詞・作曲を手掛けた作品です。B面では、メンバーの井上順氏がソロで歌唱を担当しており、シングルとして両面ともにメンバーの個性が活かされた構成となっていました。

当時のレコードジャケットには、ザ・スパイダースのメンバー7人の写真が配されています。また、「夕陽が泣いている」という先行して大ヒットしていた楽曲に続き、再び浜口庫之助氏の提供曲で大きな成功を収めたことをアピールするため、「「夕陽が泣いている」に続いて放つ 浜口庫之助氏の大ヒット!」という力強い惹句が添えられていました。

本楽曲は音楽の世界にとどまらず、他のメディアにも影響を与えています。特に有名なのが、昭和を代表する傑作スポーツ漫画である『あしたのジョー』での描写です。作中には、主人公である矢吹丈がこの「風が泣いている」を口ずさむシーンが登場し、物語の雰囲気に深みを加える役割を果たしています。このエピソードは、楽曲が当時の社会や文化に深く根差していたことを示す象徴的な例と言えるでしょう。

楽曲の編曲については、「風が泣いている」は林一氏と大野克夫氏が、「君にあげよう」は林一氏とザ・スパイダース自身が手掛けています。

発表から長い年月を経た後も、「風が泣いている」は多くのアーティストによってカバーされ、歌い継がれています。例えば、楽曲の生みの親である浜口庫之助氏自身が1991年のアルバム『浜口庫之助自作自演集』でセルフカバーを行っています。その他にも、2009年には桑田佳祐氏が自身のライブ映像作品『桑田佳祐 Act Against AIDS 2008 「昭和八十三年度!ひとり紅白歌合戦」』で、2015年には日高央氏がアニメ関連のコンピレーションアルバム「『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』神化・傑作曲集」で、そして2019年には吉幾三氏がアルバム『あの頃の青春を詩う vol.4 グループサウンズ編』でそれぞれカバーバージョンを発表するなど、世代やジャンルを超えて愛され続けている一曲です。

「風が泣いている」は、ザ・スパイダースの黄金期を彩ったヒット曲であり、そのドラマチックなサウンドと文化的な広がりによって、日本のポピュラー音楽史に確かな足跡を残しています。

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