風よ、万里を翔けよ

風よ、万里を翔けよ

『風よ、万里を翔けよ』（かぜよ、ばんりをかけよ）は、田中芳樹が手掛けた日本の時代小説であり、同名の漫画作品も存在します。この作品は、611年の中国・隋朝を舞台に、男装した女性・木蘭が主人公となり、勇気と信念によって困難に立ち向かう姿を描いています。

あらすじ

物語は、隋の第2代皇帝楊広が高句麗への遠征を計画し、広く徴兵を命じたところから始まります。木蘭は老いた父の代わりに徴兵に応じるため、男装して戦に出る決意をします。女であることを隠した木蘭は、遠征で賀廷玉、沈光という男たちと出会い、彼らと共に信頼関係を深めていきます。

しかし、遠征は想定外の大敗を喫しますが、木蘭は薛世雄の指揮の下で武勇を発揮し、無事に帰還します。沈光はその活躍から皇帝からの任命を受けて昇進します。次に起こる第3次高句麗遠征では、木蘭と廷玉が沈光の部下として再び戦場に向かいます。だが、隋国内での楊玄感の反乱が勃発し、遠征隊は高句麗を攻めることなく撤退を余儀なくされます。

撤退の際、木蘭たちは官倉を無断で開放し、飢えに苦しむ民に対して食糧を分け与えた官吏・張須陀の功を皇帝に奏上することで、彼の命を救うことに成功します。各地で反乱が勃発する中、張須陀は河南討捕軍の大使に任命され、木蘭と廷玉も副将として派遣されます。

河南討捕軍は反乱軍相手に連勝を重ねますが、皇帝の統治が揺らぎ、反乱軍のリーダーである李密の策略に陥ることになります。河南討捕軍は分断され、包囲されてしまいます。張須陀は兵の数が少ない中でも部下を救うために戦い続けますが、最終的には討たれてしまいます。彼の死後、木蘭と廷玉は沈光に引き立てられ、皇帝の警護の任に就くことになりますが、そこで木蘭は失意に沈んだ皇帝の姿を知ることになります。

物語の終盤では、宇文化及と宇文智の兄弟による乱が起き、皇帝が弑逆される事件が発生します。木蘭と廷玉は沈光の指示に従い、宇文兄弟を討つために動きます。彼らは竇建徳の下で反乱を起こし、宇文兄弟を討つことに。竇建徳からの理解を得た木蘭と廷玉は、故郷に帰る決意をします。

故郷で木蘭は再び女性の衣装を纏い、自身の正体を廷玉に告白します。廷玉は初めて木蘭が女性であったことを知り、自身の無知を悔いるのでした。

登場人物

• - 花木蘭（か もくらん）: 主人公。男装して父の代わりに戦う。
• - 賀廷玉（が ていぎょく）: 木蘭が女性であることに気づかずに彼女に恋をする。
• - 沈光（しん こう）: 木蘭の戦友で、彼女の存在に薄々気づいている。
• - 楊広（よう こう）: 隋の皇帝で、次第に腐敗していく。
• - 張須陀（ちょう すだ）: 木蘭たちの尊敬を集める官吏。
• - 秦叔宝（しん しゅくほう）、羅士信（ら ししん）: 河南討捕軍の副将。

漫画版

『風よ、万里を翔けよ』は、秋乃茉莉およびもとむらえりによって漫画化された作品も存在し、様々な表現で木蘭の物語が語られています。物語の深いテーマやキャラクターの成長は、さらなる魅力を与えています。

この作品は、時代背景を色濃く反映しつつも、自己のアイデンティティや信念を持つことの大切さを描いた感動作として、幅広い読者に支持されています。

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