風呂敷 (落語)

風呂敷（ふろしき）：古典落語の演目

「風呂敷」というタイトルのこの落語は、日本の伝統的な笑いを体現した作品の一つです。別称である「風呂敷間男（ふろしきまおとこ）」からもわかるように、この物語はかつては艶笑落語、つまり当時流行していたバレ噺の一種でした。しかし、昭和の戦時中に「禁演落語」として扱われ、エロティックな要素が少しずつ排除されていくことで、今のような滑稽噺としての姿が確立されました。

起源と歴史

風呂敷の物語の原話には諸説があり、1855年に発行された笑話集『落噺笑種蒔』のひとつである「みそかを」がその一例とされています。また、初代三遊亭圓遊が台湾を題材にしたという意見も存在します。この作品は、特に東京の落語家たちによって広く演じられており、初代柳家小せんや5代目古今亭志ん生といった著名な演者に受け継がれてきました。

あらすじ

物語は、ある長屋に住む女性・お崎とその夫・熊五郎、そして幼なじみの半七のやり取りから始まります。この日、お崎は夫の帰りを待ちながら、半七と楽しそうに語り合っていました。しかし、そこで問題が発生します。突然、戸を叩く音とともに熊五郎が帰宅してしまったのです。熊五郎は性格がつかみにくく、嫉妬深く、粗暴なため、お崎は半七を隠さなければならなくなります。急いで半七を押し入れに隠したお崎は、熊五郎に見つかったら大変だと不安が募ります。

熊五郎は酔って帰宅し、すぐに眠り込んでしまいます。そこでお崎は半七を逃がす方法を考えますが、熊五郎の寝姿がどうしても邪魔をします。悪戯好きの鳶頭・政五郎が事情を知り、彼も助けることにします。政五郎は隣家から風呂敷を借りてきて、熊五郎を起こさずに半七を逃がすアイデアを提案します。

政五郎の巧妙な計画によって、熊五郎を風呂敷で覆い隠し、半七を戸の外に逃がすことが成功します。そして、政五郎は熊五郎から風呂敷を取り外すと、彼は思わず感心し、「なるほど、そいつはいい工夫だ」と感嘆します。これはシンプルながらも人間の性、実際の生活の中でのユーモラスな部分を描き出した秀逸なストーリーです。

エピソード

5代目古今亭志ん生がこの作品を演じた映像記録は限られていますが、1955年にはNHKの『放送演芸会』において彼がこの演目を披露した際の貴重な映像が残されています。この演技は、後にDVDとして一般に販売されるほどの評価を受けました。

このように、「風呂敷」はただの笑いを得るだけでなく、当時の人々の生活や感情、社会通念が存分に盛り込まれた物語です。この作品を通じて、古典落語の魅力を再確認してみるのも良いでしょう。

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