風車祭

風車祭（カジマヤー）

池上永一による小説『風車祭（カジマヤー）』は、1994年に『文藝春秋』に連載された作品です。第118回直木賞候補にもなりました。作者にとって、デビュー作『バガージマヌパナス』が自然と生まれた作品だったのに対し、本作は作家としての自覚を持って書かれた作品とされています。

2005年には栗原まもるによって漫画化され、『One more Kiss』（講談社）にて2005年7月号から2008年1月号まで連載されました。単行[[本]]は全5巻が刊行されています。栗原氏が池上作品を漫画化するのは『バガージマヌパナス』に続き2作目です。

あらすじ

物語は1996年の沖縄県・石垣島を舞台に展開されます。高校生の比嘉武志は、翌年に97歳を迎えるフジオバァの「何か刺激がほしい！」という願いから、妖怪火を目撃し、マブイ（魂）を落としてしまいます。

しかし、その妖怪火は魔物ではなく、228年もの間マブイだけの身でさまよい続けるピシャーマでした。武志は儚げな雰囲気を持つ美しいピシャーマに一目惚れし、自分がマブイを落としているのにも関わらず、彼女の願いを叶えようとします。

ピシャーマが現在の姿になった理由は、ニライ神・マユンガナシィによって、破滅に向かう島から生き残る人を選ぶという使命を負わされていたからでした。島に古くから伝わる信仰が薄れたことが原因で、洪水、旱魃、血の海、地震、大津波など様々な災いがもたらされると予言されます。一人で、マブイだけの身で何ができるのかと悩むピシャーマを前に、災いは次々と訪れます。未曽有の危機が迫る島の運命は…！？

登場人物

比嘉 武志（ひが たけし）: 沖縄顔の高校生。バスケ部員。物知りのトミオバァを尊敬しており、妖怪火を目撃した際にマブイを落としてしまいます。ピシャーマに一目惚れし、彼女を助けようと奔走します。
ピシャーマ: 前新川首里大屋子の娘。1768年、婚礼の日に花嫁行列を抜け出した際に気を失い、石になってしまいます。数年後、明和の大津波によって砕け、以来盲目となり、マブイだけの身で島内をさまよい続けています。ニライ神によって、島から生き残る人を選ぶ使者に選ばれます。「ピシャーマ」は「娘さん」という意味です。
ギーギー: 6本足の巨大な妖怪豚。不死であり、盲目のピシャーマを導きます。
仲村渠 フジ（なかんだかり ふじ）: 1901年生まれの96歳の老婆。「富士山=不死」に由来する名前を持ち、長寿に異様な執着心を抱いています。
仲村渠 トミ（なかんだかり とみ）: 仲村渠家で唯一まともな人間。口うるさい母・フジと出戻りの娘・ハツに悩まされています。幼い頃から自分を慕ってくれる武志が心のオアシスです。
玉城 睦子（たまき むつこ）: 武志の幼なじみでバスケ部のマネージャー。武志に好意を抱き、世話を焼きます。
玉城 郁子（たまき いくこ）: 睦子の妹。変身モノのヒーローに憧れており、武志と一緒に妖怪火を目撃しマブイを落とします。
仲村渠 ハツ（なかんだかり はつ）: トミの娘で、熟年[[離婚]]して出戻ってきました。フジと共に他人の不幸を楽しみます。
美津子（みつこ）: ハツの娘でフジの曾孫。70歳以上限定のスナック「長寿」を経営しています。
赤嶺 里子（あかみね さとこ）: 島のユタ。武志と郁子がマブイを落としていることに気づき、マブイ籠めの儀式を行います。
チーチーマーチュー／ターチーマーチュー: 不思議な兄弟。チーチーマーチューは商売繁盛の絵を描き、ターチーマーチューは健康と長寿の置物を彫ります。
ホールザーマイ: 島内の神職の最高位。

用語

風車祭（カジマヤー）: 数え年で97歳（旧暦で百歳）の生年を祝う行事。
節祭（シチサイ）: グソー（あの世）の正月。
マブイ: 沖縄の言葉で「魂」を指しますが、本作では「（島に生まれ生きる者としての）霊性を帯びたアイデンティティ」と解釈されています。
妖怪火（マゾームノーナ）: マジムン（魔物）の火。直接見るとマブイを落としてしまいます。
ユタ: 沖縄の先祖崇拝に携わる巫女。
ツカサ: 八重山地方で御嶽を管理し神事に携わる巫女。
ヌジファ: 死者が現世に未練を残さないように、成仏を祈願する儀式。
マユンガナシィ: ニライ神の一種で「豊作をもたらす神」という意味を持ちます。
果報の人: 雨を降らす相を持った婦女子。

書誌情報

単行[[本]]：1997年11月20日発行、文藝春秋、ISBN 4-16-640140-8
文庫本：文春文庫、角川文庫より刊行
漫画版：栗原まもる作画、KC Kissより全5巻

外部リンク

美ら島物語 風車祭
作家の読書道:第51回 池上永一'>作家の読書道:第51回 池上永一
* 栗原まもるインタビュー'>栗原まもるインタビュー

もう一度検索