風鈴

風鈴とは

風鈴は、日本の夏に軒下などに吊り下げて使われる小型の鐘鈴です。風の力を利用して音を鳴らす仕組みになっており、その涼しげな音色は、日本の夏の風物詩として親しまれています。

構造

風鈴は、一般的に手のひらに収まる程度の大きさの椀型の外身を持ち、それを逆さにして吊り下げられるように紐が取り付けられています。外身の内側には「舌（ぜつ）」と呼ばれる小さな部品が紐で吊るされており、その紐の先には風を受けるための短冊が付けられています。風が短冊に当たると舌が揺れ、それが外身に当たって音を鳴らす仕組みです。

一般的な風鈴とは異なる構造を持つものもあり、火箸（鋼の棒）を吊り下げた火箸風鈴や、備長炭を吊り下げた風鈴なども存在します。音色は、外身や舌の材質によって左右されますが、日本では一般的に涼しげな音色として認識されています。その音色は、秋の虫の声にも似ており、冷房がなかった時代には、蒸し暑い日本の夏を過ごす中で、風鈴の音色に涼を感じる習慣がありました。

デザイン

ガラス製の風鈴には、花火、トンボ、朝顔、金魚などの絵柄が描かれていることが多いです。これは、もともと魔除けとして使われていた風鈴が、赤色に塗られていたことに由来します。

歴史

風鈴の起源は、約2000年前の中国に遡ります。竹林に吊るして風の向きや音で吉凶を占った「占風鐸」が、風鈴のルーツであると言われています。この占風鐸が、僧侶によって日本に持ち込まれ、青銅製の「風鐸」として寺の仏堂や仏塔に吊るされるようになりました。風鐸の音には、厄除けの効果があると信じられており、その音が聞こえる範囲には災いが起こらないとされていました。平安時代から鎌倉時代にかけては、貴族の屋敷でも魔除けとして風鐸が吊るされたそうです。

風鐸は、当初は大きなものでしたが、徐々に小型化していきました。「風鈴」という名前は、一説には法然が「ふうれい」と名付けたことに由来すると言われています。鎌倉時代に作られた国宝『法然上人行状絵図』には、「風鈴」という表記が見られ、その当時には既に風鈴が愛されていたことがわかります。

江戸時代になると、風鈴は一般の人々にも普及しました。もともとは金属製だった風鈴ですが、江戸中期以降にはガラス製の風鈴が現れ、江戸時代末期には、吹きガラスで作られた風鈴が流行しました。明治時代には、風鈴を売り歩く「風鈴売り」も現れ、大正時代には、南部鉄器の産地である岩手県で鉄製の風鈴が作られるようになりました。

各地の風鈴

日本各地には、様々な種類の風鈴が存在します。鉄製のものとしては、岩手県の伝統工芸である南部鉄器で作られた南部風鈴があります。銅製のものとしては、富山県の高岡銅器で作られた真鍮製の高岡風鈴や、神奈川県の小田原鋳物で作られた砂張（さはり）製の小田原風鈴があります。金属製の風鈴は、リーンと長く響く音が特徴です。

ガラス製の風鈴は、日本全国で作られていますが、特に有名なのは、昭和になって名乗り始めた江戸風鈴です（「江戸風鈴」は登録商標）。琉球ガラスや諏訪ガラスなどでも作られています。ガラス製の風鈴は、チリンチリンと短い音が特徴です。江戸風鈴や奈良風鈴などの伝統的な風鈴は、型を使わず、宙吹きと呼ばれる技法で作られます。宙吹きで作られた風鈴は、一つ一つ手作りのため、同じ音色のものはありません。

その他にも、兵庫県姫路の伝統工芸である明珍火箸を風鈴として利用した火箸風鈴や、沖縄などで作られる貝殻風鈴などがあります。

風鈴に関する行事

風鈴は、各地のイベントや行事でも楽しまれています。奈良県橿原市のおふさ観音では、毎年7月初旬から8月末にかけて風鈴まつりが開催され、全国各地の風鈴が飾られます。神奈川県の川崎大師では、7月に風鈴市が開催され、日本各地の風鈴が販売されます。東京都の浅草寺では、7月のほおずき市で、風鈴が多数販売されます。また、岩手県奥州市の水沢駅では、毎年6月から8月にホームに風鈴が吊るされ、日本の[[音風景100選]]に選ばれています。

群馬県前橋市を走る上毛電鉄では、毎年6月から8月に電車内に風鈴を吊るした「風鈴電車」が運行されており、三重県伊賀市の伊賀鉄道でも夏季に風鈴列車が運行されます。

風鈴と騒音

現代社会では、住宅が密集しているため、風鈴の音を騒音として捉える人もいます。風鈴の音は、東京都では生活騒音に分類されています。風鈴を楽しむ際には、周囲への配慮も必要です。

関連情報

風鈴の音は、日本の夏の風情を感じさせる音として、多くの人に親しまれています。しかし、現代社会においては、騒音として捉えられることもあります。風鈴を楽しむ際には、周囲への配慮も心がけたいものです。

風鈴は、その歴史やデザイン、音色など、様々な側面から楽しむことができます。この夏、あなたも風鈴の音色に耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。

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