飛狐外伝

『飛狐外伝』は、金庸による武侠小説であり、『雪山飛狐』の外伝的な作品として位置づけられています。物語は、主人公である胡斐の少年時代に焦点を当て、彼の成長と波乱に満ちた冒険を描いています。

この作品は、単なる外伝という枠を超え、本編である『雪山飛狐』の3倍近いボリュームを持ち、独立した物語としての魅力を放っています。また、金庸の他の作品『書剣恩仇録』との繋がりも深く、共通の登場人物が多数登場することで、物語に深みを与えています。

物語の舞台は清の乾隆年間。主人公の胡斐は、武術の腕前だけでなく、強い正義感と義侠心を兼ね備えた人物として描かれています。彼は、幼い頃に父を失い、様々な人々との出会いを通して成長していきます。特に、恩義を大切にする彼の姿は、読者に深い感動を与えます。

主な登場人物

胡斐（こひ）: 主人公。後に「雪山飛狐」と呼ばれるようになる少年俠客。幼い頃に義兄弟の契りを交わした趙半山から武術を学び、驚異的な成長を遂げる。義侠心に厚く、見知らぬ人や恩人のために命を懸けて戦う。
程霊素（ていれいそ）: 毒手薬王の弟子。毒と薬の扱いに長けており、優れた知恵を持つ。不器用な胡斐を陰ながらサポートし、彼に深い愛情を抱く。
袁紫衣（えんしい）: 謎の女性。武術に優れ、多くの流派の掌門を打ち破る実力を持つ。胡斐が心を寄せる少女であり、物語の中で重要な役割を果たす。
苗人鳳（びょうじんほう）: かつて胡斐の父と親友だったが、数奇な運命によって敵対することになった剣豪。非常に人格者であり、胡斐は彼への復讐に疑問を感じ始める。
馬春花（ばしゅんか）: 胡斐の幼い頃、彼を庇って命乞いをした女性。胡斐は彼女に恩を感じている。後に福康安との間に子供を産む。
趙半山（ちょうはんざん）: 紅花会の幹部であり、暗器の達人。幼い頃の胡斐に武術を教えた。後に胡斐と再会を果たす。
鳳天南（ほうてんなん）: 冷酷非道な悪役。鍾阿四一家を皆殺しにするなど、悪行を繰り返す。袁紫衣の母親との因縁がある。
福康安（ふくこうあん）: 乾隆帝の私生児。「天下掌門人大会」を開催し、武林の勢力を弱めようと画策する。

物語の展開

物語は、胡斐が幼い頃に、恩のある馬春花のために戦うエピソードから始まります。その後、彼は様々な出会いを経験し、成長していきます。彼は、鍾阿四一家の仇である鳳天南に復讐を誓い、数々の困難に立ち向かいます。

また、彼は程霊素や袁紫衣といった女性たちと出会い、それぞれとの関係を深めていきます。特に程霊素は、彼のことを深く愛し、献身的に尽くしますが、彼の心は常に袁紫衣へと向いています。この複雑な恋愛模様も、物語の魅力の一つです。

さらに、胡斐は父の仇である苗人鳳とも出会い、彼の人柄に触れることで、復讐に対する考えを揺るがしていきます。また、福康安が主催する「天下掌門人大会」に巻き込まれ、武林の陰謀に立ち向かうことになります。

『飛狐外伝』は、胡斐の成長物語であると同時に、武術、義侠心、愛憎、復讐といった様々なテーマが複雑に絡み合った、非常に読み応えのある作品です。また、映像化作品も多く、様々な形で物語を楽しむことができます。

書誌情報

日本では、徳間書店から単行本と文庫本が刊行されています。翻訳は阿部敦子が担当しています。

映像化作品

映画やテレビドラマなど、数多くの映像化作品があります。
特に、テレビドラマでは、『雪山飛狐』と合わせてドラマ化されることが多く、タイトルも『雪山飛狐』となることが多いです。2022年には、中国で『飛狐外伝 レガシー・オブ・ヒーロー』というタイトルのドラマが制作され、新たなファンを獲得しました。

『飛狐外伝』は、金庸の武侠小説の中でも特に人気が高く、多くの読者を魅了し続けています。まだ読んだことがない方は、ぜひ手に取ってみてください。

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