飯坂温泉

福島の奥座敷、飯坂温泉

飯坂温泉は、福島県福島市の飯坂地域に位置する、歴史と規模を誇る名湯です。その歴史は古く、ヤマトタケル伝説にも登場するほどで、2世紀頃からの歴史を有すると伝えられています。宮城県の鳴子温泉、秋保温泉と共に奥州三名湯に数えられ、「福島の奥座敷」と称されるほどの温泉街です。

温泉街の概要

飯坂温泉は、福島市郊外の北西、栗子連峰の麓に広がっています。摺上川を挟んで60軒以上の旅館が立ち並び、温泉街独特の風情を醸し出しています。東北新幹線福島駅から飯坂電車（福島交通飯坂線）を利用することで容易にアクセスでき、東北自動車道福島飯坂インターチェンジからも10分程度と、交通の便も優れています。

かつては歓楽街として賑わい、花柳界も存在しましたが、現在は温泉情緒あふれる木造旅館が多く見られます。東北自動車道の開通や東北新幹線の敷設によって首都圏からの団体旅行客が増加し、開発や投資が進みました。1973年には観光客数がピークを迎えましたが、その後減少傾向にあります。しかし、近年では日帰り入浴施設や足湯なども整備され、多様なニーズに対応しています。

また、飯坂温泉街の周辺には、福島県道5号上名倉飯坂伊達線（フルーツライン）沿いに、桃、梨、りんご、さくらんぼなどの果物狩りや直売所が点在し、福島の味覚を楽しむことができます。

歴史

飯坂温泉は、古くは「鯖湖の湯」と呼ばれていました。伝説によれば、日本武尊の東征の際に湯治したとされており、西行法師もこの地を訪れ、「あかずして 別れし人のすむ里は 左波子（さばこ）の見ゆる 山の彼方か」と詠んだことが、「鯖湖の湯」という名の由来とされています。

1689年には、松尾芭蕉が弟子の河合曾良とともに飯坂温泉に宿泊しましたが、『おくのほそ道』には、雨漏りのする貧しい宿で蚤や蚊に悩まされた様子が描かれています。この時、曾良は日記に「飯坂」と記し、芭蕉は「飯塚」と記したそうです。当時、内湯は少なく、外湯を巡って湯治するスタイルが一般的でした。地名の「飯坂」は、1300年頃に伊達家の分家がこの地を開墾し、飯坂姓を名乗ったことに由来します。

江戸時代中期には、街道が整備されたことで多くの旅人が訪れ、温泉地として広く知られるようになりました。芭蕉のほか、正岡子規や与謝野晶子といった文化人もこの地を訪れており、句碑なども建てられています。また、近世にはヘレン・ケラーも2度飯坂温泉を訪れています。

戦前には、ボーリングによる源泉の乱開発により枯渇の危機に瀕しましたが、その後の規制により源泉保護が行われています。1947年には、昭和天皇が戦後巡幸で花水館に宿泊し、摺上川対岸では天皇を奉迎する提灯行列が行われました。

泉質

泉質は単純温泉で、肌に優しいのが特徴です。

共同浴場

飯坂温泉には複数の共同浴場が存在し、中でも鯖湖湯は飯坂温泉発祥の湯として知られています。松尾芭蕉も入浴したとされるこの湯は、かつて日本最古の木造共同浴場でしたが、1993年に改築されました。現在、以下の共同浴場が利用可能です。

鯖湖湯（さばこゆ・定休日：月曜日）
十綱の湯（とつなのゆ・定休日：金曜日）
仙気の湯（せんきのゆ・定休日：木曜日）
導専の湯（どうせんのゆ・定休日：金曜日）
大門の湯（だいもんのゆ・定休日：木曜日）
八幡の湯（やはたのゆ・定休日：火曜日）
天王寺穴原湯（てんのうじあなばらゆ・定休日：水曜日）
波来湯（はこゆ・定休日：火曜日）

かつては市営の「切湯」も存在しましたが、老朽化のため2024年11月14日に営業を終了しました。

入浴料金

波来湯：大人300円、子供150円
その他の共同浴場：大人200円、子供100円

各共同浴場に設置された自動販売機で入浴券を購入します。

名所

飯坂温泉には、温泉施設以外にも様々な観光スポットがあります。

温泉関連
鯖湖湯：日本最古の木造建築共同浴場（改築済み）
邸宅
旧堀切邸：足湯が楽しめる
美術
飯坂明治大正ガラス美術館：明治大正期の和ガラス3千点を展示
福島片岡鶴太郎美術庭園：陶器作品など約70点を展示
ギャラリー梟：4万点以上のフクロウコレクションを展示
寺社
医王寺
飯坂八幡神社：飯坂けんか祭りが行われる
西根神社（高畑天満宮）：うそかえ祭りが開催される
公園
花ももの里：花桃が咲き誇る
イベント
ハワイアンフェス
ほろ酔いウォーク
おと酔いウォーク：音楽フェスティバル

交通

鉄道：JR福島駅から福島交通飯坂線で飯坂温泉駅下車
車：東北自動車道福島飯坂ICから約15分

飯坂温泉は、歴史と文化、そして美しい自然に囲まれた魅力的な温泉地です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してください。

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