飯尾憲士

飯尾憲士

飯尾憲士（いいお けんし、1926年8月21日 - 2004年7月26日）は、昭和期の日本の小説家。
大分県竹田市に生まれ、その作品には自身の出自と戦争体験が深く影響を与えています。父親が朝鮮民族であったこと、陸軍士官学校への入学と終戦による中途退学という経歴が、彼の文学観を形成する上で重要な要素となりました。

生涯

飯尾は陸軍士官学校を中途退学後、第五高等学校文科を経て、業界誌の編集などに携わりました。その後、文筆業に転身し、1964年には「炎」（『詩と真実』）で芥川賞候補となり、『文學界』に転載されるなど、その才能が早くから認められました。

1975年に初の著書を刊行し、1978年には父親のルーツに迫った「海の向うの血」で、すばる文学賞佳作を受賞。1980年には「ソウルの位牌」、1981年には「隻眼の人」で再び芥川賞候補となり、1982年には敗戦直後の軍人の自決を描いた『自決 森近衛師団長斬殺事件』が直木賞候補となるなど、注目を集めました。

飯尾の作品は、軍隊経験や朝鮮民族としてのアイデンティティを背景に、人間の内面にある葛藤や、歴史の暗部に光を当てたものが多く、読者に深い感動と問いかけを与えました。

2004年7月26日、飯尾憲士は生涯を閉じましたが、彼の作品は今もなお、多くの読者に読み継がれ、その文学的遺産は色褪せることなく輝きを放っています。

主な著書

『孤高 伝統を守る人と技と』 エルム 1975
『ソウルの位牌 集英社』 1980 のち文庫
『自決 森近衛師団長斬殺事件』 集英社 1982 のち文庫、光人社NF文庫
『艦と人 海軍造船官八百名の死闘』 集英社 1983 のち文庫
『隻眼の人』 文藝春秋 1984
『島に陽が昇る 元陸軍参謀飯尾町長と町民の記録』 PHP研究所 1984 のち集英社文庫
『開聞岳 爆音とアリランの歌が消えてゆく』 集英社 1985 のち文庫
『五高生殺人 思いや狂う』 集英社 1986
『魂へ』 文藝春秋 1988
『静かな自裁』 文藝春秋 1990
『怨望 日本人の忘れもの エッセイ集』 蝸牛社 1993
『平松守彦のヤル気を起こす（構成）』中経出版 1994
『【手偏に合＋辛】抬【手偏に合＋辛】【拘＋口】（さむはら）』 集英社 1994
『一九四〇年釜山』 文藝春秋 1995
『殺意』 集英社 1997
『毒笑 遺稿集』 集英社 2004

関連項目

* 将校志望を断念した日本の人物の一覧

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