飯島宗一

飯島宗一：医学と教育、平和への情熱を注いだ先駆者

飯島宗一（いいじま そういち）は、1922年11月28日に生まれ、2004年3月1日に生涯を閉じた日本の医学者（病理学者）です。医学博士の学位を持ち、広島大学と名古屋大学という二つの名門大学で学長を務めました。彼の業績は医学研究にとどまらず、教育、文化、平和運動にも及び、多方面で社会に貢献しました。

生い立ちと学歴

長野県諏訪郡平野村（現在の岡谷市）で生まれた飯島は、旧制諏訪中学（現長野県諏訪清陵高等学校）、旧制松本高校理科乙類を経て、1946年に名古屋帝国大学医学部を卒業しました。その後、1955年には西ドイツのフライブルク大学に留学し、医学研究に邁進しました。

研究者としての道

1958年に名古屋大学の助教授に就任した後、1961年からは広島大学医学部で原爆症の研究に取り組みました。広島大学では教授を務め、大学紛争時には46歳という若さで学長に就任し、混乱からの大学再建を主導しました。広島大学学長退任後は、1978年に母校の名古屋大学に移り、医学部病理学科の教授、そして同大学の学長も歴任しました。両大学からは名誉教授の称号を贈られています。

1954年には、名古屋大学で医学博士号を取得。学位論文の題目は「海[メイ]肝細胞核の自己融解並びにその所見を中心とする細胞核の形態学的構造に関する知見補遺」でした。

多岐にわたる活動

飯島は医学研究のみならず、科学、教育、文化全般に深い知識と関心を持っていました。トヨタ財団理事長、日本医学会会頭、愛知芸術文化センター総長など、数々の要職を歴任しました。また、中央教育審議会委員や臨時教育審議会第四部会（高等教育改革）の部会長、大学設置審議会基準分科会長も務め、教育改革に尽力しました。さらに、医学者の立場から核兵器廃絶と平和問題にも積極的に発言し、1990年には宮中歌会始の召人を務めるなど、社会的な活動も幅広く行っていました。

受賞と栄典

1996年には、原爆症研究などの功績が認められ、勲一等瑞宝章を受章しました。また、1997年には中日文化賞を受賞しています。

著書

飯島は、数多くの著書も残しています。歌集『水薦苅』や随筆『医学と人間』など、幅広いジャンルの作品を発表しました。原爆の人体への影響をまとめた『広島・長崎でなにが起ったのか』や、教育問題に触れた『世紀の境に 教育・社会・平和』など、彼の知性と社会への関心を示す著書は多岐にわたります。また、『学窓雑記』は、名古屋大学出版会と信濃毎日新聞社からシリーズで刊行され、大学や教育への深い洞察がうかがえます。

共編著・翻訳

多数の共編著の中には、医学書の他に『人間とは何か』『日本人とは何か』といった社会学的なテーマのものもありました。『岩波講座現代生物科学』では編集委員を務め、学術分野の発展にも貢献しました。翻訳書には、医学分野の専門書であるBuchnerの『現代病理学における構造、代謝、機能』や、メチニコフの『メチニコフ炎症論』があります。

飯島宗一は、医学者としてだけでなく、教育者、文化人、平和運動家としても多大な足跡を残しました。彼の業績は、今日の社会にも大きな影響を与え続けています。

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