飯村豊

飯村 豊：波瀾万丈の外交官人生と、その後の活動

飯村豊氏は、1946年生まれの日本の元外交官であり、駐フランス大使、駐アンドラ大使、駐モナコ大使を兼任した経歴を持つ人物です。東京教育大学附属駒場高等学校（現：筑波大学附属駒場高等学校）、東京大学教養学部を経て、1969年に外務省に入省しました。同期には、日本の外交史に名を刻む多くの著名人が含まれており、彼らと共に日本の外交の最前線で活躍しました。

外務省在籍中は、フランスでの在外研修や、欧亜局審議官、経済協力局長など要職を歴任。そのキャリアの中で、2001年に発生した外務省機密費流用事件への対応に大きく関わりました。この事件では、外務省職員の逮捕や懲戒処分が相次ぎ、大きな社会問題となりました。飯村氏は、大臣官房長として、事件の調査と対応にあたることになります。

しかし、飯村氏のキャリアにおいて、最も注目を集めたのは、田中真紀子外相との対立でしょう。2001年、小泉内閣発足後、外相に就任した田中氏は、外務省を批判し、幹部の刷新を主張しました。この中で、飯村氏と田中氏の間には激しい対立が生じ、大臣室への立ち入り禁止といった事態にまで発展しました。この対立は、外務省内部を「対決派」と「融和派」に二分し、大きな混乱を招きました。結果として飯村氏は官房長を更迭され、その後も人事異動を繰り返すことになります。

田中真紀子氏との対立後、飯村氏は駐インドネシア大使に転出。在任中は、インドネシア政府とアチェ自由運動（GAM）間の和平交渉に尽力し、2003年のアチェ和平支援国際会議開催や、2005年の和平合意に貢献したと評価されています。また、2004年のスマトラ沖地震の際には、被災地アチェへの日本の災害支援活動の現地指揮を執り、そのリーダーシップを発揮しました。さらに、北朝鮮拉致被害者である曽我ひとみさんやジェンキンスさん家族の日本帰国にも尽力しています。

その後、駐フランス大使を務めた飯村氏は、日仏外交関係樹立150周年記念行事を成功させ、日仏間の相互理解促進に貢献しました。2009年に外務省を退職後は、日本政府代表として中東地域および欧州地域の諸問題に関し交渉にあたったり、東京大学公共政策大学院客員教授を務めるなど、精力的に活動を続けています。

近年では、東京オリンピック・パラリンピック開催に反対する運動にも積極的に参加。特に、大会組織委員会が医療従事者の確保を看護師らに要請したことに強く反対し、オンライン署名活動などを主導しました。元外交官として、権力や既成事実への批判的姿勢を貫いています。

2023年には、田中真紀子氏との対立を振り返り、外交と世論の関係などを考察した著書を出版。近年のポピュリズム現象と、当時の田中氏による騒動の類似点を指摘しています。また、講演などでは、欧米との安全保障協力とASEANとの協力の両立を主張するなど、グローバルな視点からの発言を続けています。

飯村氏の経歴は、日本の外交官としての成功と苦悩、そしてその後の人生における社会貢献を余すことなく示しています。彼の経験と洞察は、日本の外交や国際関係を考える上で貴重な示唆を与えてくれるでしょう。合気道6段、無双直伝英信流居合道5段という武道の腕前も、彼の人物像を象徴していると言えるかもしれません。

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