飯田亮

セコム創業者・飯田亮氏の生涯：揺るぎない信念と革新の軌跡

飯田亮氏は、1933年、酒問屋を営む家に生まれました。東京都中央区日本橋で育ち、神奈川県立湘南高等学校では、後に著名な作家となる石原慎太郎氏らと学んだことはよく知られています。同級生たちと過ごした青春時代は、のちに「太陽族」と称される自由奔放な若者たちのモデルとしても語られています。学習院大学政経学部卒業後、家業である岡永に入社しますが、1962年、独立を決意します。

その独立の決意は、単なる家業からの離脱ではなく、新たな時代のニーズを見据えた大胆な一歩でした。学生時代の友人であった戸田壽一氏と共に、日本初の警備保障会社である日本警備保障株式会社を設立、代表取締役社長に就任します。東京オリンピックでの警備業務を担うなど、事業は急速に拡大していきました。1976年には代表取締役会長に就任、そして1983年には社名をセコムに変更しました。この大胆な社名変更は、社員からの反対を押し切って行われたものであり、飯田氏の強い意志と革新的な視点を示すエピソードと言えるでしょう。

セコムを巨大企業へと成長させた飯田氏ですが、その功績は企業経営のみに留まりません。1997年に取締役最高顧問に就任後は、数々の社会貢献活動に携わりました。1998年には人道目的の地雷除去支援の会（JAHDS）の理事長、日本卓球協会会長に就任し、2002年には全国警備業協会顧問、日本経済団体連合会常任理事、特殊法人等改革推進本部参与会議座長などを歴任しました。代表権を返上した後も、社会では「飯田代表」と呼ばれ、その影響力は衰えることはありませんでした。

飯田氏の経営哲学は、数々の著書にも反映されています。『経営の実際：8つの重要なポイント』、『できる上司は「あと5分」の考え方が違う!』、『世界のどこにもない会社を創る!』など、多くの書籍で自らの経験や考え方を発信し続けました。これらの著書は、後進の経営者たちにとって貴重な指針となっています。

2023年1月7日、89歳で逝去されました。その功績は、従四位叙位と旭日重光章の授章という形で讃えられました。

飯田氏の家族もまた、日本の経済界に大きな足跡を残しています。長兄は岡永会長、次兄はテンアライド創業者、三兄はオーケー創業者であり、叔父には英語学者の飯田耕作氏（元神奈川大学学長）がいます。さらに、セコム代表取締役社長の尾関一郎氏は、飯田氏の娘婿にあたります。

飯田亮氏の生涯は、単なる成功者の物語ではありません。困難に立ち向かう勇気、時代の変化を見据えた先見性、そして社会貢献への強い意志。これらの要素が、彼の成功と社会への貢献を支えていたと言えるでしょう。彼の生き様は、現代の経営者や社会人にとって、大きな学びと示唆に富むものです。セコムという企業が、日本社会に与えた影響は計り知れませんが、その礎を築いた飯田亮氏の功績は、これからも長く語り継がれていくことでしょう。

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