飯田直景

飯田直景

飯田直景（いいだ なおかげ）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将です。通称は飯田覚兵衛（いいだ かくべえ、または、いいだ かくへえ）。尾張加藤氏の家臣として、その名を歴史に刻みました。特に、日本槍柱七本、加藤十六将、加藤家三傑の一人として知られ、武勇に優れた人物です。その功績から食録6,500石を与えられ、後に10,500石に加増されています。講談の題材にもなるほど、逸話に富んだ生涯を送りました。

生涯

永禄5年（1562年）、飯田直澄の子として山城国山崎（現在の京都府乙訓郡大山崎町付近）に生まれました。若い頃から加藤清正に仕え、森本一久、庄林一心と並び、加藤家三傑と称されました。また、三宅角左衛門と共に加藤家の両角とも呼ばれる重臣として活躍しました。特に槍術に優れ、その武勇は際立っていました。

天正11年（1583年）の賤ヶ岳の戦いでは、加藤清正の先鋒として活躍しました。

天正17年（1589年）の天草国人一揆討伐においても目覚ましい働きを見せ、その功績により豊臣秀吉から清正を通じて白黒鳥毛の長槍を賜ったと伝えられています。

文禄・慶長の役（朝鮮出兵）では、森本一久と共に亀甲車という装甲車を製作し、晋州城攻撃の際に一番乗りを果たしたとされています（第二次晋州城攻防戦）。この功績により、豊臣秀吉から「覚」の字を与えられたという説もありますが、当時の書状などでは「角」兵衛のまま用いられています。

また、土木普請にも才能を発揮し、加藤清正の居城となった隈本城（熊本城）の築城において、その能力を大いに発揮しました。180mにも及ぶ三の丸の百間石垣などは彼の功績とされ、「飯田丸」としてその名が郭に残っています。その他、名古屋城普請や江戸城普請にも奉行として参加しました。

清正の死後も、その子である加藤忠広に仕えましたが、忠広の力量不足を嘆き、肥後熊本藩の没落を予見していたと伝えられています。その後、熊本藩が改易されると、清正の盟友であった黒田長政に召し抱えられ、福岡に移り住みました。福岡赤坂の屋敷跡には、彼ゆかりの大銀杏が残っています。

寛永9年（1632年）、70歳で死去しました。

長男の直国は熊本藩士、次男は福岡藩の中老、三男の何右衛門も熊本藩士となり、いずれも子孫は明治以降まで存続しました。直国の子孫には、明治時代の元老であり、大日本帝国憲法起草の中心人物の一人である井上毅がいます。

登場作品

司馬遼太郎『覚兵衛物語』（新潮文庫『俺は権現』に収録 ISBN 4-06-131806-3）
海音寺潮五郎『加藤清正』

脚注

* 通俗教育研究会 編『逸話文庫 : 通俗教育　武士の巻』大倉書店、1911年。（国立国会図書館デジタルコレクション）https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/777446/82

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