飯降伊蔵

飯降伊蔵

飯降伊蔵（いぶり いぞう）は、天保4年12月28日（1834年2月6日）に生まれ、明治40年（1907年）6月9日に没した人物です。彼は大工であり、宗教家であり、天理教の教祖である中山みきの教えに基づき、甘露台の建立に中心的な役割を果たしました。後に天理教の本席を務め、教団の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと初期の生活

伊蔵は、大和国宇陀郡向渕村（現在の奈良県宇陀市室生向渕）で、飯降家の四男として生まれました。幼名は亀松。父親は村の庄屋でしたが、伊蔵が8歳の時に村の金を無断で使い込んだ疑いをかけられ、その地位を追われました（後に無実が判明）。

14歳頃から大工としての修行を始め、22歳で独立し、櫟本（現在の天理市櫟本町）で身を立てました。その後、間もなく結婚しますが、最初の妻は出産後すぐに亡くなり、生まれた子供も2歳で亡くなるという不幸に見舞われました。その後、別の女性と再婚しますが、その女性は博打好きで、正直者の伊蔵とは性格が合わず、短期間で離婚に至りました。

天理教との出会い

その後、「さと」という女性と3度目の結婚をし、生涯の伴侶となりました。元治元年（1864年）、さとの産後の病気の際に、天理教の教祖である中山みきのもとを訪れ、親神天理王命の話を聞き、命を助けられたことをきっかけに、天理教の信仰に入りました。

それ以降、伊蔵は櫟本から中山みきのもとへ毎日通い、教祖から願い人からの相談事があった際に扇を持って願いを聞き、指図を出す「扇のさづけ・言上のゆるし」を授かりました。「おつとめ」を行う建物の建設に尽力し、世間の迫害が強まる中で教祖を支え続けました。

本席としての活動

明治15年（1882年）には、一家で中山家に住み込み、みきが亡くなった明治20年（1887年）からは「本席」という地位に就きました。明治40年（1907年）に73歳で亡くなるまでの約20年間、教祖みきに代わって信者たちに神の言葉を伝え、初代真柱である中山眞之亮と共に、二頭体制のもとで天理教の教勢を拡大させていきました。

晩年とその後

晩年、伊蔵は自身の死後に教示を伝える人間が必要であると考え、上田ナライトという女性信者を二代目本席にしようとしましたが、彼女は病気などの理由からその役目を全うすることができず、次第に教団内での影響力を弱めていきました。ナライトが中心から離れたことで、「真柱」・「本席」の二頭体制は終わりを迎えました。

飯降伊蔵は、天理教の基礎を築いた重要な人物として、その名が深く刻まれています。

参考文献
* 『新版 飯降伊蔵伝』（植田英蔵著、善本社、1995年）

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