餌付け

餌付けとは：野生動物との不適切な関わり

餌付けとは、野生動物や野生由来の動物に対して、人が意図的に餌を与えることで、動物を餌に慣れさせる行為です。その目的は、単に餌を与えること自体であったり、餌を与えることを通して動物の警戒心を解き、観察しやすくすることであったりします。餌付けは、飼育下で行われる場合と、野生状態で行われる場合があります。

餌付けの種類

大きく分けて、飼育下での餌付けと、野生動物への餌付けがあります。

飼育下での餌付け

動物園などで飼育されている動物が、新しい環境に慣れ、餌を食べるように仕向けるために行われます。また、水族館などでは、観客に見せるための「餌付けショー」も行われています。

野生動物への餌付け

野生動物への餌付けは、保護を目的とする場合と、観察を容易にする目的で行われる場合があります。

保護目的: 希少な動物に対し、餌を与えることで保護を行います。ただし、近年では人為的な形態を避ける傾向にあります。
観察目的: 動物を観察しやすくするために餌付けを行います。観光目的で行われることもあります。例えば、公園でハトに餌をやる行為や、観光地でサルに餌を与える行為などが挙げられます。

餌付けの問題点

餌付けは、一見すると動物を助ける行為のように思えますが、実は様々な問題を引き起こす可能性があります。

生態系の破壊: 特定の動物に餌を与えることで、生態系のバランスが崩れることがあります。例えば、特定の動物が増えすぎたり、他の動物が減ってしまったりすることがあります。
害獣化: 餌付けによって動物が人に慣れ、食べ物を求めて人家に侵入するようになることがあります。その結果、農作物への被害や、人への危害が発生する可能性があります。
人への依存: 餌付けによって動物が自分で餌を探すことをやめ、人に依存するようになることがあります。その結果、人が餌を与えなくなると、動物が飢えてしまうことがあります。
感染症の拡大: 餌を介して感染症が動物から動物へ、あるいは動物から人へと広がる可能性があります。
行動の変化: 餌付けにより、動物の自然な行動が変化することがあります。例えば、本来冬眠するはずの動物が、餌があるために冬眠しなくなったりすることがあります。

保全生態学的な観点

保全生態学の観点からは、保護を目的とする餌付けは、生態系全体の保護という観点から見て、必ずしも良いとは言えません。餌付けは、特定の種類のみを選択的に保護することになり、生態系全体のバランスを崩す可能性があるからです。

無意識の餌付け

意図的な餌付け以外にも、無意識のうちに動物に餌を与えてしまっているケースがあります。例えば、収穫されなかった果実を畑に放置したり、キャンプで出た残飯を放置したりする行為は、動物にとって餌となり、餌付けと同じような影響を与える可能性があります。

餌付けに関する法規制

日本では、野生動物への餌付けを禁止する法律はありません。しかし、地域によっては条例で餌付けを規制している場合があります。例えば、栃木県日光市や福島市、群馬県みなかみ町などでは、サルへの餌付けが禁止されています。

人間関係における「餌付け」

人間関係においても、食事をおごったり、物を贈ったりして相手に取り入ることを「餌付け」と呼ぶことがあります。これは、野生動物を餌で誘い寄せる行為を揶揄した表現です。

まとめ

餌付けは、安易に行うと様々な問題を引き起こす可能性があります。野生動物との適切な距離を保ち、生態系全体のバランスを考えることが重要です。不用意な餌やりは慎みましょう。

参考資料

宮地伝三郎(1966),『サルの話』,岩波新書（岩波書店）
「現代農業」2003年9月号(vol.82,no.9),「特集　鳥獣被害対策　大特集」,農山漁村文化協会
R.B.プリマック・小堀洋美,『保全生物学のすすめ』(1997),文一総合出版
餌付け・給餌活動の問題点の整理 - 厚岸水鳥観察館
野生動物への餌付け防止のお願い - 東京都環境局 緑の創出と自然環境の保全
調査と事業の報告「野生動物への餌づけを考える」シンポジウム報告集ができました - ナキウサギの鳴く里づくりプロジェクト協議会
クマやサルなど野生動物への餌付け防止について - 環境省 野生鳥獣の保護管理

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