ナキウサギ

ナキウサギ：小さくも多様な生態を持つ動物

ナキウサギは、ウサギ目ナキウサギ科に分類される動物の総称で、現生種はナキウサギ属のみに属します。約30種が確認されており、その名の通り、高い警戒音で鳴くことが特徴です。ウサギ科の動物と比較して耳介が小さく、一見するとネズミやハムスターのような姿をしています。

名称の由来

属名の Ochotona はモンゴル語の ogotona または ochodona に由来します。また、英名の Pika はツングース語の piika からきており、本来は「ピカ」と発音するのが正しいのですが、そのスペリングから「パイカ」と読まれることが多いです。

生息地

ナキウサギは、アジア、北アメリカ、そして東ヨーロッパの一部に分布しています。多くの種は、寒冷な気候で岩場の割れ目を隠れ家として単独で生活しますが、プレーリードッグのように温暖な草原で複雑な巣穴を掘って群れで暮らす種もいます。また、草原に生息する種は、周囲を見渡すために二本足で立つことができます。ユーラシアの草原では、ナキウサギの巣穴にユキスズメ類が巣を作るなど、他の生物と共存している例も見られます。

生息地の危機

考古学者のドナルド・グレイソンは、人類の活動と地球温暖化によってアメリカのナキウサギの生息地が高地へと移動しており、これにより絶滅する可能性があると警告しています。グレイソンは、シエラネバダ山脈からロッキー山脈にかけての地域における過去4万年のナキウサギの生息域を調査しており、同様の研究結果はすでに別の論文でも発表されています。

特徴

ナキウサギは体長約18-20cm、尾長2cm弱、体重75-290gの小動物で、短い四肢、丸い耳、短い尾を持っています。ウサギと同様に、食べた後、まず柔らかい緑色の糞をし、それを再度食べることで栄養を摂取します。その後、固形の糞をします。

草食性で、主に草やスゲ類、潅木の小枝、コケ、地衣類などを食べます。また、食糞によって栄養補給を行うものもいます。他のウサギ目の動物と同様、切歯を持ちますが犬歯はなく、臼歯の数はウサギ類よりも少ないです。歯式は 2.0.3.2/1.0.2.3 です。

岩場に住むナキウサギは一度に産む子の数が少ないですが、巣穴を掘る種はより多くの子を産む傾向があります。これは、後者の生息地の方が資源が豊富であるためと考えられています。妊娠期間は約25〜30日です。

習性

ナキウサギは昼行性または薄暮性で、昼間に最も活動的です。冬眠はせず、冬の間は自身で作った干し草を食料兼寝床とします。新鮮な草を集めて積み重ねて干し草にし、乾燥したら巣穴に運び込んで保存します。他の個体の干し草を盗むこともあり、その結果、アオダイショウやオコジョなどの捕食者に漁夫の利を与えることもあります。

ユーラシアのナキウサギは一般的に家族単位で暮らし、餌の収集と見張りを分担します。なわばりを持つ種もいます。一方、北米のナキウサギは単独性で、繁殖期を除き単独で生活します。

分類

ナキウサギは以下の様に分類されます。

重歯目（ウサギ目）LAGOMORPHA
ナキウサギ科 Family Ochotonidae
ナキウサギ属 Ochotona
Pika 亜属： 北方に棲息する種
Ochotona alpina　タカネナキウサギ
Ochotona argentata　ギンナキウサギ
Ochotona collaris　クビワナキウサギ
Ochotona hoffmanni　ホフマンナキウサギ
Ochotona hyperborea　キタナキウサギ
O. h. yesoensis　エゾナキウサギ
Ochotona pallasi　アルタイナキウサギ
Ochotona princeps　アメリカナキウサギ
Ochotona turuchanensis　トゥルチャンナキウサギ
Ochotona 亜属： 潅木帯・ステップに棲息する種
Ochotona cansus　カンシュクナキウサギ
Ochotona curzoniae　クチグロナキウサギ
Ochotona dauurica　ダウリアナキウサギ
Ochotona huangensis　チンリンナキウサギ
Ochotona nubrica　ヌブラナキウサギ
Ochotona pusilla　ステップナキウサギ
Ochotona rufescens　アフガンナキウサギ
Ochotona thibetana　チベットナキウサギ
Ochotona thomasi　トマスナキウサギ
Conothoa 亜属： 山地に棲息する種
Ochotona erythrotis　チュウゴクナキウサギ
Ochotona forresti　フォレストナキウサギ
Ochotona gaoligongensis　ガオリゴンナキウサギ
Ochotona gloveri　グローバーナキウサギ
Ochotona himalayana　ヒマラヤナキウサギ
Ochotona iliensis　イリナキウサギ
Ochotona koslowi　コズロフナキウサギ
Ochotona ladacensis　ラダックナキウサギ
Ochotona macrotis　オオミミナキウサギ
Ochotona muliensis　ムリナキウサギ
Ochotona nigritia　クロナキウサギ
Ochotona roylei　ロイルナキウサギ
Ochotona rutila*　アカナキウサギ

まとめ

ナキウサギは、その愛らしい外見とは裏腹に、厳しい環境下で生き抜くための様々な適応能力を持つ動物です。しかし、地球温暖化や人間の活動による環境変化によって、その生息地は危機に瀕しています。今後のナキウサギの保護活動と生態研究が、この小さな動物たちの未来を左右することになるでしょう。

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