饒益神宝

饒益神宝についての詳しい説明

饒益神宝（じょうえきしんぽうまたはニョウヤクしんぽう）は、859年に発行された日本の銭貨で、これまでに発行された皇朝十二銭の中では8番目に位置しています。この貨幣は平安時代の貴重な歴史的証拠として知られており、その発行は皇朝の貨幣制度の一環として大きな意味を持っています。

鋳造と流通の歴史

饒益神宝は、貞観元年（859年）の4月に発行され、主に銅で造られました。その重量は2.55g、直径は17.4mmから21.0mmで、銅分は63%です。この時代の他の銭貨と同様、饒益神宝も流通中に文字が不鮮明になるなどの品質問題が存在しました。特に、平安遷都以降に鋳造された9種類の貨幣では、このような品質の低下が顕著でした。

皇朝十二銭の中でも、饒益神宝は特にその流通の際の記録において重要です。『日本三代実録』によれば、清和天皇が治める時代において発行され、名前の「饒益」は通常の意味で「物が豊かなこと」を表しつつ、仏教用語では「物を与えること」を意味することが示されています。このような背景は、当時の貨幣に対する聖なる意味合いを強調するものです。

品質に関する問題

貞観7年（865年）には、銭貨の文字が不明瞭であったり、貨幣そのものが欠けているケースがあることが記録に残されています。このことは、撰銭に関する最古の記録とされており、公的な詔が出され、新銭の文字が不明瞭でも実用に支障がないとされる場合、撰銭することが禁止されたことが文献に示されています。このような状況は、饶益神宝の流通がいかに厳しい環境の中で行われていたかを物語っています。

現存数と貴重性

饒益神宝の鋳造期間はわずか11年とされています。そのため、皇朝銭の出土記録を合計すると1万2千枚余り存在しながらも、この饒益神宝は発見されたものの数がわずか76枚と非常に少ないことが判明しています。このことから、饒益神宝は平安時代の貨幣の中でも最も現存数が少なく、貴重な存在として評価されています。

饒益神宝の短い鋳造期間とその希少性は、現在でも多くの研究者や収集家の関心を引きつけており、その歴史的価値はますます高まっています。文化財としての意義を持つこの銭貨は、平安時代の経済や社会、宗教的背景を知るための貴重な手がかりとなっています。

もう一度検索