日本三代実録

日本三代実録

『日本三代実録』は、平安時代に編纂された歴史書で、六国史の第六にあたります。この書は、清和天皇、陽成天皇、光孝天皇の三代、天安2年（858年）から仁和3年（887年）までの約30年間を扱っています。延喜元年（901年）に完成し、藤原時平、菅原道真、大蔵善行、三統理平らが編纂に携わりました。全50巻からなり、編年体の漢文で記述されています。

編纂の経緯

『日本三代実録』の編纂は、寛平5年（893年）頃に宇多天皇の命により始まりました。源能有、藤原時平、菅原道真、大蔵善行、三統理平らが編纂に携わりましたが、源能有の死去や宇多天皇の譲位により一時中断します。その後、醍醐天皇の勅により編纂が再開され、延喜元年（901年）に完成しました。編纂の中心人物は、菅原道真と大蔵善行であったと推測されています。しかし、菅原道真の失脚と左遷、三統理平の転任により、最終的に完成を報告したのは藤原時平と大蔵善行の2名でした。

内容の特徴

『日本三代実録』は、国家の儀礼、慶事、災異などを詳細に記録することを目的としていました。特に、詔勅や表奏文を豊富に収録し、慣例となった先例を記載するなど、当時の官人にとって非常に有益な情報を提供しています。また、節会や祭祀などの年中行事の執行についても詳しく記述されています。

この書は、六国史の中でも特に精緻な記述を持ち、後世の史書編纂の模範となりました。しかし、現存する写本には、叙位任官や詔勅・上表の本文、薨卒に関する記述に脱文や省略が多く見られます。これについては、編者が意図的に事実を隠したのではないかという見方もありますが、一方で、誠実な記述態度によるものだという解釈も存在します。

江戸時代には、松下見林や狩谷棭斎らが写本の補訂作業を行いました。

また、巻15と巻19から巻48の一部には、写本の省略箇所があり、完全な形で伝わっていない部分もあります。

災害の記録

『日本三代実録』には、地震をはじめとする様々な災害の記録が残されています。特に、29年間の記録の中で地震は300件以上記録されており、当時の災害の多さを物語っています。

主な災害として、以下のものがあげられます。

864年（貞観6年）：富士山の貞観大噴火（駿河国、甲斐国に被害）
869年（貞観11年）：陸奥国の貞観地震、肥後国の大風雨
887年（仁和3年）：仁和地震（南海トラフ巨大地震の一つ）

六国史以後

六国史の後も、修史事業は試みられ、「新国史」なるものが存在したと伝えられていますが、完成には至らなかったとする見解が有力です。その原因としては、律令政治の衰退が挙げられています。

参考文献

『新訂増補 国史大系 4　日本三代実録』（前・後）、黒板勝美編、吉川弘文館、初版1937年、復刊2007年ほか
『読み下し 日本三代実録』（上・下）、武田祐吉・佐藤謙三訳、戎光祥出版、新装復刊2009年
坂本太郎 『六国史』 吉川弘文館、1970年、新装版1994年
坂本太郎 『日本の修史と史学　歴史書の歴史』 新版・講談社学術文庫、2020年

関連項目

大日本史料
大日本古記録
群書類従
園韓神社　園韓神祭

外部リンク

菊池真一研究室「六国史」〔全文〕「J－TEXTS 日本文学電子図書館」からページ移行
『日本三代實録』朝日新聞本 『増補　六国史』（全十二巻　佐伯有義、朝日新聞社、昭和15）
『日本三代実録』 - コトバンク

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