首羅山遺跡

首羅山遺跡について

首羅山遺跡（しゅらさんいせき）は、福岡県糟屋郡久山町に位置する中世の山岳寺院跡であり、2013年に国の史跡として指定されました。この遺跡は、かつて「首羅山頭光寺」と呼ばれる寺院が存在したとされる場所であり、長い歴史と豊かな文化を持つ地域に位置しています。

遺跡の概要

首羅山遺跡は久山町の北東部にあり、古くから地元の人々に知られていましたが、専門的な調査は2005年まで待たなければなりませんでした。久山町教育委員会による一連の調査の結果、この遺跡は当時の姿が驚くほど良好な状態で残っていることが確認されました。2017年からも引き続き、久山町教育委員会と九州歴史資料館の共同調査が進められています。

中世の遺跡は、戦争や開発行為によって数多くが消失してしまったため、今もなお残る場所は非常に貴重とされています。幸いにも久山町は福岡都市圏にありながら開発があまり進んでおらず、当時の国際貿易都市「博多」を色濃く伝える遺構が保たれています。主に本谷、西谷、山王(日吉）地区に遺構があり、現在も調査が続いているため、一般公開は年に一度のみとなっています。令和2年3月には、その遺跡への登山道もオープンしました。

歴史的背景

首羅山遺跡の興味深い伝説には、天平時代に遡ります。百済国からやって来た「白山権現」は虎に乗っていたとされ、村人がその虎の首を切ると、光り輝く首が現れ、沙羅に埋葬されたとの話があります。この出来事を受けて、村人たちは十一面観音を祀る祠を建てたことが、「首羅山頭光寺」の伝承につながりました。

鎌倉時代の初期には、三百を超える僧侶たちが集まり、寺院は繁栄を極めたと言われています。この時期、中世の博多において、貿易が盛んであったことは有名で、博多の綱首たちによってこの寺院は保護され、さらに貿易関係者を迎えるための庭園付きの遺構も存在していたとされています。

遺構の詳細

本谷地区

本谷地区の中腹には、基壇を持つ五間堂が中心となり、小堂、鐘楼、瓦葺の建物、墓地などが存在していたと考えられています。この地域からは、中国の景徳鎮産の青白磁や朝鮮半島の高麗青磁などの貴重な貿易陶磁器が発掘されており、特に景徳鎮産のものは日本国内で初めてのものであるとされています。

西谷地区

西谷地区には、僧源通が観法したと伝わる「観法岩」や滑石製の石鍋製作跡、文保二（1318年）年銘の板碑がある「墓ノ尾」と呼ばれる墓地群があります。また、石垣を伴った庭園状の遺構も確認されており、今後さらなる調査が期待されています。

山頂地区

山頂区域には、かつて白山神社が存在し、現在は江戸時代に作られた祠や、中国風の石造物が残っています。山頂地区の調査からは、幅4メートル、66段からなる石段が発見され、その中心軸は南北方向を正確に向いていることが確認されています。この石段は本谷地区の五間堂を中心とした伽藍の軸線と重ね合う形になっており、13世紀に大規模な工事が行われたことも明らかになっています。これにより、当時の先進的な土木技術が窺い知れるのです。

首羅山遺跡は、さまざまな遺構とその豊かな歴史から、多くの人々にとって特別な意義を持つ場所として、今後も大切に保護され続けることでしょう。

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