首都圏地震観測網

首都圏地震観測網（MeSO-net）について

首都圏地震観測網（Metropolitan Seismic Observation network、略称：MeSO-net）は、文部科学省の『首都直下地震防災・減災 特別プロジェクト』の一環として、2007年度より整備された中感度地震観測網です。南関東の関東平野を中心に約400箇所（2009年時点）にボアホール型の地中地震計が設置されています。

従来の観測網と比較して高密度な観測網を構築したことで、より精度の高い震源分布の決定が可能になりました。さらに、建物を破壊するような強い揺れ（強震動）の予測に必要な地下構造（地震波速度構造）の解明にも貢献しています。

特徴

MeSO-netは、高品位の観測データを得るために、関東平野の堆積層下の基盤まで到達する3000m級の観測井が理想とされています。しかし、コストと工期を考慮し、約20m程度の地下に地震計が設置されています。地上部の装置は、停電時でも約50時間稼働できるようになっています。

観測点の多くは、公立の教育機関、公園、公立図書館などに設置されています。観測井が浅いため、生活ノイズや気象現象に伴うノイズによる観測データのS/N比の低下が懸念されましたが、様々な手法を用いてノイズを低減したデータが得られています。

また、ボアホール観測施設の建設技術は民間主体であるため、技術の伝承が途絶えないよう、構造を実現するための工法や機器の型式などが文書として記録されています。

観測データの解像度を向上させるため、観測点は気象庁や防災科学技術研究所の高感度地震観測網（Hi-net）よりも高密度に配置されています。データセンターは東京大学地震研究所内にあり、免震機能と自家発電装置を備え、観測データは関係機関に配信されています。

データ伝送

MeSO-netでは、GPSを用いた高精度の時刻情報を利用し、観測データに正確なタイムスタンプが付与されています。データ伝送にはインターネット回線を使用していますが、従来のWINシステムの伝送方式では、回線の混雑時や受信側の負荷過大時にデータ欠落が発生することがありました。

そこで、MeSO-netでは、自律協調型データ伝送プロトコル（Autonomous Cooperative data Transfer Protocol：ACT Protocol）が開発されました。このプロトコルでは、データ伝送が滞った際に送信量を減らし、正常に伝送されたという応答がない場合はデータを再送するなどの処理が行われます。これにより、運用開始から2009年10月時点まで、データ伝送の欠落は発生していません。ACT Protocolのソースコードはオープンソースとして公開されています。

関連情報

MeSO-netは、南関東直下地震、強震観測網、関東地震、フィリピン海プレートなど、地震に関する様々な研究や観測において重要な役割を担っています。また、温泉地学研究所とも連携し、地震活動の解明に貢献しています。

外部リンク

首都直下地震 防災・減災特別プロジェクト
首都直下プロジェクト 東京大学地震研究所
報告書: 首都圏地震観測網(MeSO-net)で見られる様々なノイズ
MeSO-netによる千葉県北東部の地震 地震調査研究推進本部

出典

首都圏地震観測網 MeSO-net
首都圏地震観測網(MeSO-net)の展開 地震研究所彙報. 第84号4冊, 2009, pp. 331-344

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