首都圏ICカード相互利用サービス

首都圏ICカード相互利用サービスについて

首都圏ICカード相互利用サービスは、JR東日本が発行するSuicaと、パスモが発行するPASMOの二つのICカード乗車券が、それぞれのエリア内における交通機関の利用、および電子マネー機能を含む主要なサービスを相互に利用できるようにしたものです。2007年3月18日にサービスが開始され、首都圏の交通利便性を大きく向上させました。

概要

このサービスの背景には、首都圏の民鉄・バス事業者がPASMOを導入するにあたり、先行導入されていたSuicaとの相互利用を考慮したシステム構築がありました。両者のシステムは「ICカード相互利用センター」で接続され、機器仕様やソフトウェアも共通化されています。これにより、約40万件の機器動作パターンや約12億3千万通りの運賃判定パターンに対応できるようになりました。

共通利用可能な内容

Suica・PASMO利用可能エリアの相互乗り入れ
Suica・PASMOのいずれにも「バス定期券」「連絡定期券」を搭載可能
Suica・PASMO双方のエリアで「チャージ（オートチャージ含む）」「バス利用特典サービス」を利用可能
Suica加盟店・PASMO加盟店双方で電子マネーを共通利用可

これらのサービスは、特別な手続きなしで利用可能です。

サービス開始とエリア拡大

サービス開始当初は、Suicaは首都圏エリアのみ、PASMOは対象事業者の一部での導入でしたが、その後エリアが拡大されました。2008年には仙台・新潟地区でも利用可能になり、2013年には交通系ICカード全国相互利用サービスが開始され、他の主要ICカードとの相互利用も可能になりました。

ただし、一部地域やサービスにはSuica・PASMO限定のものも存在します。例えば、関東鉄道や千葉都市モノレールではSuicaとPASMOのみが利用可能であり、「オートチャージ」や「バス利用特典サービス」も同様です。

利用方法

鉄道での利用

Suica・PASMOのエリア内では、改札機にカードをタッチするだけで運賃が自動的に精算されます。連絡割引も自動適用されますが、重複する場合は最も割引額が大きいものが適用されます。一度に精算できるのは4事業者分までで、途中改札を通らない場合は最大6事業者までの連続乗車が可能です。

ICカードは1枚使用が原則であり、磁気券との併用は一部の連絡改札口を除きできません。自動精算機では、定期券情報がない場合に限り不足運賃の支払いに利用できます。

定期券区間外を利用する場合は、自動的に精算され、区間外運賃の合計と通しの運賃を比較して安い方が適用されます。連絡定期券の発売範囲もサービス開始時に拡大されました。

普通運賃の計算方法

普通運賃は、実際の乗車経路に関わらず、最も安くなる経路で自動計算されます。ただし、改札外乗り換えが必要な場合や、JRの通過連絡運輸が適用されない場合など、特定の条件では運賃が異なる場合があります。

改札外乗り換えでは、60分以内に再入場しないと運賃が打ち切られます。また、目的地よりも高額な改札外乗り換え駅を経由した場合は、超過分の運賃は戻りません。

JRの通過連絡運輸では、ICカード利用の場合、各区間の運賃が別々に計算されるため、磁気乗車券と比べて高くなる場合があります。ただし、一部区間ではICカード利用の方が安くなるケースもあります。

他の事業者を経由して元の会社線に戻る場合、基本的には最初に入場した事業者の路線のみで乗車したものとみなされますが、共同使用駅ではより安い運賃が適用されます。

連絡改札がない駅での乗り換え

連絡改札がない駅では、簡易ICカード改札機にタッチして乗り換え情報を記録する必要があります。これを怠ると、意図しない運賃が引き落とされる可能性があります。かつては、拝島駅や伊勢崎駅などでも同様の取り扱いが行われていましたが、現在は一部駅に限られています。

オートチャージサービス

オートチャージサービスは、チャージ残高が一定額未満になると自動的にチャージされる便利な機能です。Suica・PASMOのエリア内でのみ有効で、全国相互利用サービス利用時は対象外です。

バスでの利用

利用可能なバスには、「バス特 PASMO Suica」または「PASMO Suica ご利用いただけます」というステッカーが貼られています。バス車内でのチャージも可能で、Suica・PASMOのどちらでもバス利用特典サービスが利用できます。

バス利用特典サービスでは、バスに乗るたびにポイントが貯まり、一定以上貯まると特典バスチケットが付与されます。このチケットは、次回のバス利用時に優先的に使われます。

電子マネー

SuicaとPASMOの電子マネーは共通で利用でき、各加盟店で相互に利用可能です。店頭でのチャージも、以前は制限がありましたが、現在は解消されつつあります。

他の交通系ICカード（Kitaca、TOICAなど）とも電子マネーサービスを相互利用できる店舗も増えています。

履歴の表示・印字

Suica・PASMOの利用履歴は、駅の券売機などで印字・表示できます。Suicaは最大100件、PASMOは20件の履歴が印字可能です。ただし、利用から26週間を経過した履歴は表示・印字できません。

記名PASMOでは、インターネットを通じて3か月前までの履歴を照会できます。

その他

PASMOサービス開始当初は、Suica所持者が相互利用できることを知らずにPASMOを購入するケースも見られました。現在では、両カードの相互利用を啓発するポスターやパンフレットが配布されています。

障害者用ICカードサービス

2023年3月18日からは、首都圏ICカード相互利用エリア内で使用可能な「第一種身体障害者・第一種知的障害者本人とその介助人用ICカードサービス」も開始されています。

まとめ

首都圏ICカード相互利用サービスは、SuicaとPASMOの相互利用を可能にし、首都圏の交通をより便利にするための重要なシステムです。鉄道、バス、電子マネーなど、さまざまな面で利便性が向上しており、これからも首都圏の移動を支える基盤として活躍していくでしょう。

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