首都立地法 (アメリカ合衆国)

首都立地法の概要とその背景

首都立地法（しゅとりっちほう）は、アメリカ合衆国がどこに首都を置くかという重要な問題を解決した連邦法です。正式名称は「アメリカ合衆国政府の暫定的および恒久的所在地を決める法」であり、この法律により、首都はポトマック川沿いに設置されることとなりました。

この法律の成立は、アメリカの独立を勝ち取った後の混乱した時代における政治的な妥協の結果でした。首都の場所については、ジェームズ・マディソン、トーマス・ジェファーソン、アレクサンダー・ハミルトンの間で議論が交わされ、最終的にポトマック川沿いが選定されました。マディソンとジェファーソンは南部を重視する立場を取ったのに対し、ハミルトンは全国の州が抱える負債の問題を肩代わりさせるための法案を推進していました。この調整の結果、ハミルトンはポトマック案に対する北部議員の支持を得ることに成功し、マディソンは南部議員が負担することになっている負債を連邦政府が肩代わりすることに合意しました。

この法は、ジョージ・ワシントン大統領にポトマック川沿いの正確な立地を選ぶ権限を付与し、また1800年12月までに首都としての使用開始を求めました。それ同時に、フィラデルフィアが暫定的な首都として選ばれました。ワシントンは首都建設のために三人のコミッショナーを指名し、連邦政府の建物の建設を監督することとされました。また、トーマス・ジェファーソンはその建設のためのデザインコンペを支援し、議事堂や大統領官邸に関する設計を募りました。

首都立地法成立の歴史的背景

アメリカ独立戦争中、第二次大陸会議の会議所はフィラデルフィアにありました。しかし、イギリス軍の脅威から避けるために会議は他の都市に移動したり、再びフィラデルフィアに戻ったりしました。こうした移動の中で、議会の開催場所としてのフィラデルフィアの存在感は増していましたが、最終的には他の地からも様々な首都候補が提案されました。

1783年の時点で、さまざまな州から多様な候補地が挙がりましたが、南部の州は首都を北部に置くことを望まず、それが議論を複雑にしました。また、1783年にはポトマック川沿いのジョージタウンやデラウェア川沿いの候補地が一時承認されたものの、すぐに撤回されました。

首都の場所問題は数年間棚上げされ、その後の1787年憲法制定会議においても議論に上がりました。1789年に議会が招集されるとその議論は再燃し、ポトマック河畔とサスケハナ河畔の間で意見が分かれました。

妥協と法案の成立

1790年の夏、議論は再び活発化し、アレクサンダー・ハミルトンは国の財政計画を進めたいと考えていました。彼が提案したのは、北部州の負債を連邦政府が肩代わりすることに関するものでしたが、南部州からは強い反発がありました。特にバージニア州の議員たちは、負債の負担が自分たちに直接的な影響を与えることを懸念していました。

こうした中、ジェファーソンがハミルトンとマディソンを招待した晩餐会が行われ、この場で首都の立地をポトマック河畔に定めることと、連邦政府による負債の肩代わりを約束するという妥協が成立しました。これにより、首都立地法は最終的に議会を通過しました。

首都立地法は1790年7月1日に上院で、7月9日には下院で可決され、1790年12月にはフィラデルフィアにおいて議会が再招集されました。ポトマック川のメリーランド州側における土地が対象とされ、ワシントン大統領に立地選定の権限が与えられ、さらには1800年1月の第1月曜日までに適切な建物を準備するという目標が設定されました。

建設の進展

ワシントン大統領はすぐに建設計画をスタートさせ、フィラデルフィアの暫定首都からの移転を加速させました。しかし、建設にはさまざまな課題がありました。特に資金不足が深刻であり、議事堂やその他の建物の建設が遅延しました。

最終的には、議事堂の上部が1800年に完成し、初めての会期が開催されることになりましたが、下院の移転完了はそれよりも数年後の1811年となりました。

このように、首都立地法はアメリカ合衆国の初期の歴史において、地域間の妥協と合意形成の重要性を示す法律であり、ワシントンD.C.の発展に大きな影響を与えました。

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