首都高地・指形稜線の戦い

首都高地・指形稜線の戦い（しゅとこうち・ゆびがたりょうせんのたたかい）は、朝鮮戦争中の1952年に、国連軍と中国人民志願軍の間で繰り広げられた戦闘です。この戦いは、休戦交渉が難航する中で、中朝軍が戦況を有利に進めるために行った局地的な攻撃が発端となり、両軍は戦略的に重要な高地を巡り激しい攻防戦を展開しました。

戦闘の背景

1951年秋の攻勢以降、戦線は膠着状態にありました。休戦会談が開始されてから1年以上が経過しても、捕虜送還問題で合意に至らず、交渉は停滞していました。このような状況の中、中朝軍は国連軍の戦線に局地的な攻撃を実施し、交渉を有利に進めようとしました。

1952年4月、韓国軍第2軍団は華川で再編され、金城から北漢江に至る前線を米軍第9軍団から引き継ぎました。第2軍団は、第3師団、第6師団、首都師団を配下に置き、中東部戦線を防御していました。第2軍団の主抵抗線は、烽火山、轎岩山、663高地、北漢江東岸、949高地、973高地、通先谷を結ぶ線で、この線は1951年秋の攻勢で確保されていました。

第2軍団の防御戦略は、金城の統制を最優先とし、主抵抗線の要となる高地群を確保することでした。特に17号道路や103番道路、そして949高地から北漢江に至る敵の接近経路を封鎖し、敵の攻撃を前線で食い止めることを目的としていました。この地域に対峙する中国軍は、第12軍と第68軍の一部と見られました。第12軍は第31師を第6師団の前方、第35師を首都師団の前方に配置しました。第68軍は第12軍と連携し、漁雲里から文登里の戦線を担当していました。

戦闘の経過

1952年6月、韓国軍第2軍団は、敵情の把握と陣地破壊を目的とした限定的な攻撃を各師団に指示しました。これにより、前哨陣地を巡る争奪戦が再燃しました。この作戦は「バックショット作戦」と呼ばれました。

作戦地域は、江原道金城郡一帯の山岳地帯で、龍鶴山や轎岩山など周辺を一望できる高地がありました。東には北漢江、南には金城川が流れていました。特に重要な要衝であった首都高地は、中国軍の接近を監視し、周辺の渓谷を観測するのに適していました。また、主抵抗線から1キロ前方にある指形稜線は、師団側面の脅威を取り除き、補給路を確保するために不可欠な場所でした。

6月16日、首都師団は軍団の戦闘境界線の調整に従い、轎岩山東側の765高地から690高地、663高地、北漢江東岸の漁雲里を結ぶ線を主抵抗線としました。さらに575高地、指形稜線、首都高地などに前哨を配置しました。首都師団は、ヤッホー峠から汝文里を境界として、左第一線に第1連隊、右第一線に第26連隊を配置し、第1機甲連隊を予備として防御に当たっていました。

一方、首都師団と対峙する中国軍第35師は、572高地から472高地を結ぶ線で防御していました。この部隊は、野戦経験が豊富で、山岳遊撃戦にも慣れていました。陣地の大部分は洞窟化されており、約1か月分の補給品を貯蔵していました。このため、一定期間の戦闘を継続することが可能でした。

韓国軍と中国軍は、渓谷を挟んで対峙していましたが、中国軍の一部が指形稜線の下端とヤッホー峠南側の621高地まで進出し、首都師団の防御陣地に脅威を与え始めました。この状況を受け、首都師団長は、これらの中国軍を排除するため、第1連隊と第26連隊の一部に攻撃を命じました。

7月8日、第26連隊第2大隊が621高地に、第1連隊第3大隊が指形稜線に攻撃を開始しました。濃霧のため視界が悪く、敵情の把握が困難な状況でした。第26連隊第2大隊は、高地の頂上を占拠しましたが、中国軍の反撃により撤退を余儀なくされました。第1連隊第3大隊は、指形稜線の下端にある無名高地A-B-Cを制圧しましたが、中国軍の砲撃を受け、C高地を放棄しました。その後も、両軍は高地を巡り激しく争奪戦を繰り広げました。

8月5日、中国軍は首都高地に攻撃を開始しました。首都師団は、激しい抵抗を行い、中国軍を撃退しましたが、その後も首都高地を巡る争奪戦が続きました。両軍は、幾度も攻撃と反撃を繰り返し、高地を奪い合いました。9月6日には、中国軍が再び攻撃を開始し、首都高地と指形稜線を一時的に奪取しましたが、韓国軍は最終的にこれらの高地を奪還しました。

10月6日、中国軍は再び攻撃を仕掛けましたが、首都師団はこれを撃退しました。しかし、第1機甲連隊が失った575高地は回復できませんでした。その後、首都師団は10月25日に現主抵抗線を第8師団に引き渡し、米第8軍の予備となりました。一方、中国軍の第35師は575高地を確保しましたが、首都高地と指形稜線の確保に失敗し、戦力が半減した状態で10月末に第67軍隷下の部隊と交代しました。

戦闘の終結

4ヶ月に及ぶ攻防戦の結果、首都師団は首都高地と指形稜線を確保することに成功しました。しかし、この戦いで多くの犠牲者を出し、575高地を失いました。この戦闘は、朝鮮戦争における重要な局地戦の一つであり、両軍の戦略と戦術が複雑に絡み合った戦いでした。

参加部隊

国連軍
第2軍団
首都師団
第1連隊
第26連隊
第1機甲連隊
第10野戦砲兵大隊
第107中迫撃砲兵中隊
工兵大隊
支援部隊
第5砲兵団
第987野戦砲兵大隊
第2野戦砲兵団
第53野戦砲兵大隊
第55野戦砲兵大隊
第6野戦砲兵団
第60野戦砲兵大隊
第61野戦砲兵大隊
第98野戦砲兵大隊
第52戦車中隊1個小隊

中国軍
第12軍
第35師

参考文献

Hermes, Walter G. (1992). Truce Tent and Fighting Front. Center of Military History, United States Army. ISBN 0-16-035957-0
韓国国防軍史研究所編著、翻訳・編集委員会訳『韓国戦争第6巻休戦』かや書房、2010年。ISBN 978-4-90-612469-5
“韓國戰爭史第8巻對陣中期（1952.4.1～1952.12.31）” (PDF). 韓国国防部軍史編纂研究所.
* “6·25戦争史第10巻-휴전회담 고착과 고지쟁탈전 격화” (PDF) (韓国語). 韓国国防部軍史編纂研究所.

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