首 (北野武)

北野武による小説『首』は、2019年12月20日にKADOKAWAから出版されました。この原作を基に、著者である北野武自身が脚本、編集、監督、そして主演を務める形で映画化が実現し、2023年11月23日に公開されました。この作品は、戦国時代の激動の時代を舞台にした歴史群像劇です。

あらすじ

物語は戦国時代を舞台に展開します。羽柴秀吉と千利休に雇われた曽呂利新左衛門が、謀反を起こして逃亡中の武将、荒木村重を偶然にも捕らえたことから事態は急変します。同じ頃、丹波の農民である茂助は、戦で手柄を立てることを夢見て秀吉の軍勢に加わります。
捕らえられた村重の「首」を巡る争いは、織田信長、羽柴秀吉、明智光秀、徳川家康といった名だたる武将たちを巻き込み、様々な思惑が交錯する戦国の「饗宴」へと発展していきます。この複雑な人間関係と策略の応酬は、やがて日本史上最大の事件の一つである本能寺の変へと繋がっていくのです。

物語を彩る人物たち

本作には、歴史上の著名な武将たちが多数登場し、それぞれの立場と思惑が物語を深く掘り下げています。

羽柴秀吉（演：ビートたけし）
足軽から侍大将へと異例の出世を遂げた野心家。織田家の後継者の座を狙う明智光秀とはライバル関係にありながら、状況に応じて共闘もします。本能寺の変勃発後、「中国大返し」を成功させ、天下取りへの道を駆け上がります。

明智光秀（演：西島秀俊）
織田信長の有力な家臣。荒木村重とは特別な関係にあるとされ、信長からの命令と村重への思いの間で揺れ動きます。信長の度重なる理不尽な仕打ちに苦悩し、やがて歴史を大きく変える決断を下します。

荒木村重（演：遠藤憲一）
信長に反旗を翻した武将。信長への恨みから謀反を起こしますが敗れ、千利休の助けを得て明智光秀に匿われます。物語におけるキーパーソンであり、その後の消息は不明です。

織田信長（演：加瀬亮）
天下統一を目指す冷酷かつ圧倒的なカリスマを持つ大名。一方で、家臣に対しては凶暴で予測不能な一面を見せます。後継者問題に対する思惑が、家臣たちの関係性を複雑にしていきます。

徳川家康（演：小林薫）
信長の同盟者。村重を匿っているという疑いをかけられ、信長や光秀から命を狙われることになりますが、秀吉の助けによって難を逃れます。

千利休（演：岸部一徳）
茶人でありながら、武将たちの間で情報や人間関係を操作するフィクサー的な存在。物語の重要な場面で登場し、流れを左右する役割を担います。

その他、秀吉の弟・秀長や軍師・黒田官兵衛、光秀の忠実な家臣・斎藤利三、信長の側近・森蘭丸、そして様々な思惑を持つ忍者集団など、個性豊かな登場人物たちが戦国の世を生き抜く様が描かれます。

映画製作について

映画「首」は、総製作費15億円を投じて製作されました。北野武監督としては6年ぶりの新作であり、公開に先駆けて第76回カンヌ国際映画祭の「カンヌ・プレミア部門」に日本人監督として初めて選出され、国際的な注目を集めました。撮影は、山形県（スタジオセディック庄内オープンセット）、岩手県（えさし藤原の郷）、長野県、栃木県など、日本各地の歴史的な景観地で行われました。配給は東宝とKADOKAWAが共同で手掛けています。

北野武独自の視点と演出によって、戦国時代の武将たちの人間的な葛藤や欲望、裏切りがリアルかつ大胆に描かれた本作は、歴史ファンのみならず、幅広い観客にとって見応えのある作品となっています。

もう一度検索