中国大返し

中国大返し（ちゅうごくおおがえし）

中国大返し、または備中大返しと呼ばれるこの出来事は、戦国時代の1582年に発生した羽柴秀吉の軍団の大移動を指します。主君織田信長の急死を受け、秀吉は迅速に行動を起こしました。その背景には、彼が高松城攻めを行っていた際に本能寺の変を知るという重大な出来事がありました。

高松城攻めから本能寺の変までの経緯

秀吉は、天正10年（1582年）3月から中国方面軍の軍団長に任じられ、備中高松城を攻める立場にいました。彼は初め、播磨姫路城から備前へ入り、まずは常山城を攻め、その後、宇喜多秀家の軍勢と合流し、合計3万の兵力を持つに至ります。彼らは備中の日畑城、冠山城、庭瀬城、加茂城など毛利方の城を次々と陥落させていきました。

秀吉はまた、毛利水軍の調略にも成功し、特に村上水軍を味方に引き込むことで、さらに有利な戦局を展開していました。こうして、高松城主の清水宗治は、織田方の誘いを断り毛利方に残留していましたが、結果として彼は秀吉の大軍に包囲されることになりました。

秀吉の水攻め

秀吉は、高松城を攻める際に、3,000人弱の兵力を擁する城を一気に殲滅するための大軍包囲戦を行いました。しかし、思いのほか苦戦を強いられることとなり、信長に援軍を要請します。その後、秀吉は水攻めの作戦を決定し、5月8日に堤防の造成を開始しました。これにより、高松城は水に浸水し「陸の孤島」となってしまい、毛利の援軍も手をこまねいてしまいました。

本能寺の変の発生

一方で、明智光秀は信長の命令で接待役を務めていたが、秀吉からの援軍要請に応じて出陣の準備を進めていました。しかし、6月2日の早朝、光秀の軍によって本能寺が包囲され、信長は自ら命を絶つ事態となります。この事件は、光秀の企みの結果でした。

信長は逃げることなく、最後まで応戦し、ついには切腹によって自らの命を絶ちました。これにより、信長の死は瞬く間に広まりました。丸腰の信長が本能寺に宿泊していたことから、その状況は光秀にとって絶好の機会となったのです。

中国大返しの実行

秀吉は、本能寺の変の報を聞いたのは6月3日の深夜から4日の未明でした。情報の漏洩を防ぐため、彼は軍の口を閉ざし、直ちに毛利との講和を結びます。秀吉は、宗治の切腹と引き換えに毛利方との和睦が成立し、高松城を陥落させたのです。

その後、急速に京都を目指して行軍を開始し、6月4日には高松城を出発したとされます。さらなる行軍が進む中で、彼は次第に快進撃を続け、わずか10日間で備中高松城から山城山崎まで約230kmの道のりを踏破したのです。

山崎の戦い

その後、彼は山崎において明智光秀との壮絶な戦いを繰り広げました。6月13日、秀吉軍が山崎に到着した段階で、光秀の軍勢は主に内部の混乱に陥っていました。秀吉の優れた戦術と迅速な対応により、光秀軍は敗北を喫し、その結果、光秀自身も逃亡を余儀なくされます。

本能寺の変から始まったこの一連の出来事は、戦国時代の歴史において重要な転換点となり、秀吉の名声を確立するに至りました。彼はその後、日本の支配者としての地位を確立し、豊臣政権へと結実するのです。

このように、中国大返しは、戦国時代の戦略や心理戦の複雑さと共に、羽柴秀吉という人物の名を歴史に刻む重要な事件であったと言えます。

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