香取正彦

香取正彦について

香取正彦（かとり まさひこ）は、1899年1月15日に東京小石川で生まれ、1988年11月19日に亡くなった、日本の著名な鋳金工芸作家です。彼は特に梵鐘制作で知られ、1977年には重要無形文化財保持者、すなわち「人間国宝」に認定されました。

生い立ち

香取は母国の千葉県佐倉市に移り住んだ後、少年時代をそこで過ごしました。東京美術学校に進学し、鋳金科で古典を基にした研究を行い、津田信夫の指導を受けながら製作技術を磨いていきました。1925年に卒業した彼は、早くも同年のパリ万国装飾美術工芸博覧会で「苺唐草文花器」を出品し、銅牌を受賞しています。また、1930年から3年間、帝国美術院展覧会の工芸部門において特選を受賞し、無鑑査となるなど、若い頃からの才能が実を結びました。

戦後の活動

第二次世界大戦後は、戦争中に失われた仏具や仏像の修理と保護に注力しました。1949年からは本格的に梵鐘の制作を始め、著名な寺院や戦争の象徴である広島平和の鐘など、数多くの作品を残しています。1953年には芸術院賞を受賞し、1954年からは日本伝統工芸展の審査委員としても活動しました。

1977年に「人間国宝」に認定され、1981年には自身の梵鐘制作の集大成として『百禄の鐘』を出版するなど、作家としての地位を確立しました。また、1987年には日本芸術院会員に推挙され、様々な作品が多くの美術館に所蔵されています。

作品

香取の作品には、東京国立近代美術館が所蔵する『鋳銅花器』（1930年）や『青銅回文菱花器』（1963年）などがあり、さらには佐倉市立美術館には『麒麟』や『獅子』が展示されています。また、正倉院御物柄香炉や様々なスタイルの花器も有名です。特に「朧銀」という技法を駆使した表現は、彼の独自のスタイルを形成し、今なお多くの人々に支持されています。

最後の作品

香取正彦は1988年に宮城県岩沼市の竹駒寺の梵鐘を製作している最中に亡くなりました。この作品は彼にとって最後の大作となり、完成を目前に控えた状態でその生涯を閉じたことが、彼の精力的な創作活動の象徴とされています。

関連情報

香取正彦の作品や業績は、日本の伝統工芸における重要な遺産を形成しており、彼の影響は今なお多くの工芸家に受け継がれています。また、彼の父である香取秀真も著名な工芸家であり、香取家は日本の工芸界において特異な存在となっています。

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