香蘇散

香蘇散（こうそさん）

香蘇散は、日本の伝統医学である漢方において用いられる医薬品の一つです。主に、気滞（気の巡りが滞る状態）を伴う風邪の治療に用いられ、特に行気薬として、気の流れを改善する目的で使用されます。この処方の出典は、中国の宋代に編纂された医学書『和剤局方』です。

名称の由来

香蘇散という名称は、構成生薬である香附子（こうぶし）と蘇葉（そよう）に由来します。香附子はハマスゲという植物の根茎を乾燥させたもので、蘇葉はシソまたはチリメンジソの葉を乾燥させたものです。これらの生薬が、香蘇散の主要な効果を発揮すると考えられています。

概要

香蘇散は元来、虚弱体質の人の風邪に用いられることが多いですが、漢方医である大塚恭男は、高齢者の風邪にも有効であると述べています。高齢者の場合、一見すると頑強に見えても、免疫力や抵抗力が低下していることが少なくありません。そのため、60歳以上であれば、体質に関わらず香蘇散を使用できるとしています。また、大塚恭男は、頻繁に風邪をひく人や、うつ状態を伴う人に、平素から香蘇散を服用してもらうことで、風邪の予防効果も期待できると述べています。

構成生薬

香蘇散は、以下の5つの生薬から構成されています。

1. 香附子（こうぶし）: ハマスゲの根茎を使用します。気の巡りを改善し、精神的なストレスを和らげる効果があるとされています。
2. 陳皮（ちんぴ）: ウンシュウミカンの果皮を乾燥させたものです。消化機能を助け、痰を取り除く効果があります。
3. 蘇葉（そよう）: シソまたはチリメンジソの葉を使用します。発汗作用があり、風邪の初期症状を緩和する効果があります。
4. 生姜（しょうきょう）: ショウガの根茎を使用します。体を温め、発汗を促し、消化を助ける効果があります。
5. 甘草（かんぞう）: ウラルカンゾウまたは同属植物の根および根茎を使用します。炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。また、他の生薬の作用を調和させる役割も担います。

これらの生薬が組み合わされることで、香蘇散は、気滞を改善し、風邪の諸症状を緩和する効果を発揮します。体質や症状に合わせて、適切な服用量を守ることが重要です。

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