陳皮

陳皮：歴史と用途に満ちた柑橘の果皮

陳皮は、柑橘類の成熟した果皮から作られる生薬であり、古くから香辛料や薬用酒、茶など幅広い用途で利用されてきました。日本薬局方では、ウンシュウミカンまたはマンダリンオレンジの成熟果皮と定義されていますが、歴史を遡ると、その原植物には時代による変遷が見られます。

陳皮の起源と混乱

陳皮の利用は古く、『神農本草経』には「橘皮」として記載されていることから、長い歴史を持つことが分かります。その後、『湯液本草』（1246年）では「陳橘皮」という名称が登場し、それが略されて「陳皮」と呼ばれるようになったとされています。しかし、李時珍は橘、柚、柑の三者は類似するものの同種ではないと指摘し、柑に8種、橘に14種が存在すると記しています。この記述は現代の柑橘類の分類とは必ずしも一致せず、陳皮の原植物の特定を困難にしている一因となっています。さらに、江戸時代以前には、現在の日本薬局方に記載されているウンシュウミカンなどは広く栽培されていなかったため、時代ごとに利用可能な柑橘類が選ばれてきたと考えられます。市場においても、陳皮のほか橙皮、柑皮、青皮、橘皮など、様々な名称で柑橘類の果皮が取引され、混同されることも少なくありませんでした。

薬としての陳皮

「陳皮」の「陳」は、未成熟の青い果皮を「青皮」と呼ぶのに対し、成熟した状態の果皮であることを意味します。陳皮には、ヘスペリジンやルチンなどのフラボン配糖体が含まれています。漢方では、芳香性健胃薬、鎮咳去痰薬として、消化不良、食欲不振、感冒などに用いられ、胃苓湯、香蘇散、平胃散、補中益気湯、六君子湯などの漢方方剤にも配合されています。

食材としての陳皮

陳皮は、香辛料としても広く利用されています。中国の五香粉、日本の七味[[唐辛子]]、カレー粉などに用いられるほか、屠蘇散の材料にもなります。また、お茶に混ぜて飲んだり、砂糖を加えて茶外茶として楽しむこともできます。ユズを原料とするものは「柚陳皮」と呼ばれ、独特の風味を持っています。特に、鹿児島県奄美大島では、タンカンの皮を干して薬味として用い、郷土料理である鶏飯の香り付けに欠かせない存在となっています。

まとめ

陳皮は、長い歴史を持つ生薬であり、薬用と食用の両面で私たちの生活に深く関わっています。その原植物については歴史的経緯から複雑な部分がありますが、現在でも広く利用され、その多様な用途は、柑橘類の果皮が持つ独特の風味と薬効によるものです。今後も、その有用性から、様々な分野で活用が期待されるでしょう。

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