馬伝染性貧血

馬伝染性貧血に関する概要

馬伝染性貧血（うまでんせんせいひんけつ、英：equine infectious anemia）は、主にウマやロバに感染するレトロウイルス由来の伝染病です。この病気は、貧血や発熱を特徴とし、感染がひろがることで深刻な影響を及ぼします。特に競走馬にとっては致命的な場合もあり、注意が必要です。

原因と症状

馬伝染性貧血の原因は馬伝染性貧血ウイルスというRNAウイルスです。このウイルスは血液を介して吸血昆虫によって広がります。感染経路としては、アブやサシバエなどの吸血昆虫によるものが一般的ですが、母子感染、感染した血液や母乳を介した感染も報告されています。

この病気には急性型、亜急性型、慢性型の3つの主なタイプがあります。

• - 急性型: 重度の貧血を伴い、急激な発熱から短期間で衰弱し、最終的に死亡します。
• - 亜急性型: 発熱が数回繰り返され、その後衰弱し死に至ります。
• - 慢性型: 発熱の頻度は減少し、外見上健康に見えますが、ウイルスを保有し新たな感染源となる可能性があります。

診断法

昔は血中の担鉄細胞を観察することで診断をしていましたが、信頼性が低いため現在は使用されていません。日本では1965年に競馬場での集団感染を契機に、本疾患に関する大規模な研究が進み、血清診断法や寒天ゲル沈降試験が確立されました。これにより感染の確定診断が可能となりました。

予防と治療

残念ながら、馬伝染性貧血に対する治療法は確立されていません。また、ワクチンも開発されていないため、感染した場合の対処法としては殺処分が求められます。このため、競馬場やトレーニングセンターでの集団感染が発生すると、経済的な損失や競馬ファンへの波紋を呼ぶことが多いです。

特に、影響力のある競走馬が感染した場合、その損失は非常に大きく、競馬業界全体が危機に瀕することもあります。

各地域における状況

国際的に見ても、馬伝染性貧血は依然として問題視されています。ロシアや中南米諸国では継続的に発生しており、欧米でも定期的に検査が行われています。アメリカでは、検査の結果陽性率が減少傾向にありますが、未検査馬の状況は不明です。

イギリスやアイルランド、フランス、イタリア各国でも陽性馬が確認されていますが、日本は比較的抑制に成功している国の一つとして挙げられます。

日本では、家畜伝染病予防法によって、この病気が指定され、定期的な検査が義務付けられています。感染が確認された場合には、速やかに対処が求められ、競走馬としての登録抹消や殺処分が命じられることとなります。

歴史

日本においても、かつては多くの馬がこの病気に感染し、年間数万頭が処分されていました。1929年に法整備がなされ、1951年には家畜伝染病として認定されました。検査による防止策が功を奏し、過去数十年の間は発生が非常に少なく、2017年には国内の清浄化が確認されました。ただし、国際的なリスクは依然として存在し、発展途上国では十分な検査体制が整っていないため懸念が残ります。

この病気に対する理解と感染拡大を防ぐための体制の強化が求められる中、馬伝染性貧血は競馬業界だけでなく、農業や経済にも深刻な影響を及ぼす可能性のある疾患であり、関係者は常に警戒を怠らない必要があります。

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