馬場宏二

馬場宏二：過剰富裕論を唱えた経済学者

馬場宏二（ばば ひろじ、1933年4月8日 - 2011年10月14日）は、日本の著名な経済学者であり、東京大学の名誉教授でした。経済学博士の学位を持ち、マルクス経済学を専門としていました。

生涯

群馬県で生まれた馬場は、小学校時代を台湾で過ごし、終戦後に日本へ引き揚げました。1953年に群馬県立渋川高等学校を卒業後、1957年に東京大学経済学部を卒業しました。東京大学大学院社会科学研究科を単位取得満期退学し、神奈川大学講師・助教授、東京大学助教授・教授を経て、1994年には大東文化大学の教授に就任しました。2011年10月14日、胃癌のため78歳で生涯を閉じました。

研究活動

馬場宏二は、マルクス経済学者として「過剰富裕論」を提唱したことで特に知られています。この理論は、資本主義経済における過剰な富の蓄積がもたらす問題点に着目したものでした。晩年には、経済学説史にも強い関心を示し、特に貿易理論におけるヘンリー・マーチンを再評価し、「発見」したことで学界に貢献しました。

主要な著書

馬場宏二は、数多くの著作を世に送り出しました。その一部を以下に紹介します。

単著
『アメリカ農業問題の発生』（東京大学出版会、1969年）
『世界経済――基軸と周辺』（東京大学出版会、1973年）
『現代資本主義の透視』（東京大学出版会、1981年）
『富裕化と金融資本』（ミネルヴァ書房、1986年）
『教育危機の経済学』（御茶の水書房、1988年）
『新資本主義論――視角転換の経済学』（名古屋大学出版会、1997年）
『会社という言葉』（大東文化大学経営研究所、2001年）
『マルクス経済学の活き方――批判と好奇心』（御茶の水書房、2003年）
『もう一つの経済学――批判と好奇心』（御茶の水書房、2005年）
『経済学古典探索――批判と好奇心』（御茶の水書房、2008年）
『宇野理論とアメリカ資本主義』（御茶の水書房、2011年）

編著
『シリーズ世界経済（1）国際的連関――焦点と回路』（御茶の水書房、1986年）
『シリーズ世界経済（2）アメリカ――基軸国の盛衰』（御茶の水書房、1987年）
『シリーズ世界経済（3）ヨーロッパ――独自の軌跡』（御茶の水書房、1988年）
『シリーズ世界経済（4）日本――盲目的成長の帰結』（御茶の水書房、1989年）

共編著
『資本主義はどこに行くのか――20世紀資本主義の終焉』（加藤榮一・三和良一、東京大学出版会、2004年）
『現代世界経済の構図』（工藤章、ミネルヴァ書房、2009年）

訳書
『世界経済論』（アーサー・ルイス、新評論、1969年）

これらの著書は、馬場宏二の幅広い研究関心と深い学識を示すものです。特に、マルクス経済学の視点から現代資本主義を分析した著作は、多くの研究者や学生に影響を与えました。

馬場宏二の遺産

馬場宏二は、その生涯を通じて経済学の発展に大きく貢献しました。彼の研究は、現代社会の経済問題を理解する上で重要な視点を提供しています。また、教育者としても多くの学生を育て、その影響は今もなお続いています。過剰富裕論をはじめとする彼の研究は、現代社会における格差や富の偏在といった問題に対する深い洞察を与え、今後の経済学研究においても重要な参照点となるでしょう。

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