馬庭念流

馬庭念流の歴史と概要

馬庭念流（まにわねんりゅう）は、日本の古武道の流派であり、剣術を核として長刀術や槍術も含む体系的な武道です。この流派は、樋口家第17代当主である樋口定次が友松氏宗から教えを受け、その成果を基に確立されました。

流派の根源

馬庭念流の歴史は、相馬四郎義元入道慈恩が念流を創始したことに始まります。天正時代、念流の第7代目である友松偽庵が中国地方から上州多胡郡馬庭村を訪れ、樋口定次に剣法を教えました。この交流を通じて、定次は念流を完全に習得し、第8代目として継承したのです。こうして、馬庭村に伝わる流派であることから「馬庭念流」と名付けられました。

現代の伝承

現在では群馬県下に多くの門人が存在し、特に赤堀村において本間仙五郎が馬庭念流から派生した本間念流を受け継いでいます。

馬庭念流の樋口家は、1797年から1857年までの間に合計14件の奉納額を行い、その活動は地元地域から江戸や鎌倉、さらには金刀比羅宮まで及んでいます。これにより、馬庭念流の広がりと影響力が証明されています。さらに、1823年には伊香保温泉の伊香保神社で、北辰一刀流の千葉周作との間で奉納額掲額を巡る騒動、いわゆる伊香保神社掲額事件が発生しました。この事件が西原好和の『伊香保額論』や曲亭馬琴の『兎園小説』に取り上げられたことで、馬庭念流の名は広く知られることとなりました。

稽古と技術

馬庭念流の稽古は、木刀を使用した形稽古と、独自の防具を身に着けての試合稽古（袋竹刀）を中心に行われます。この防具は門弟により自作され、技や技術の継承において重要な役割を果たしています。現在の稽古では、形稽古が基本とされており、習得に必要な時間は非常に長く、徹底した体作りが求められます。基本的な表五本だけでも5-6年、長刀や裏技まで習得するには20年以上の年月がかかることもあります。

作家坂口安吾は、『馬庭念流のこと』の中でこの流派の魅力を語っています。彼は、馬庭念流の「無構え」のスタイルを称賛し、しっかりとした体形から繰り出される攻撃力や防御力、そして相手を誘う巧妙さに感嘆しています。実際、馬庭念流の技は完全に実戦に根付いたものであり、余分な体裁を排除したシンプルな美しさが魅力の一つです。

文化財と系譜

馬庭念流は群馬県の重要無形文化財に指定されており、1999年1月23日にはその地位が正式に認められました。また、「馬庭念流道場及び関係文書」も群馬県指定の史跡として認識されています。歴代の家元は相馬四郎義元から始まり、各代が技術の発展と継承に尽力してきました。特に樋口家の当主は、代々この流派の伝承に携わり、多くの弟子を育ててきました。 現在の当主は樋口定仁氏で、平成10年1月18日にその家督を継承しました。

稽古内容

馬庭念流では、以下のような様々な形が修得されます：

• - 表五本：上畧、下畧、中畧、無構、合掌
• - 裏三本：切送、上段切、三段切
• - 裏五本と組十本：打込乱勝、獅子峰下など、念流独特の技が含まれます。

道場の建築

馬庭念流道場は、切妻造りであり、慶応3年に建築されたことが記録されています。道場のスタイルとその構造も、伝統的な武道の重要な側面を示すものとなっています。

このように、馬庭念流は長い歴史と深い伝統を有する流派であり、古武道としての魅力と合理性を持っています。

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