馬来遅

馬来遅（ば らいち、Mǎ Láichí）、別名アブドゥ・ハリムは、17世紀後半から18世紀にかけての清代に生きた、イスラム教における重要な人物です。彼は、スーフィズムの一派であるフフィー教団（虎夫耶、Khufiya）の創設者として知られています。

1681年、馬来遅は甘粛省河州に生まれました。幼少の頃からイスラム教の教えに触れ、8歳からモスク（清真寺）で学び始めました。18歳で学業を修めると、故郷の河州をはじめ、民和や広河などの各地のモスクでアホン（イスラム教の指導者）として活動しました。彼の知識と指導力は早くから認められ、地域社会におけるイスラム教の発展に貢献しました。

1728年、馬来遅はイスラム教徒にとって重要な巡礼であるメッカ巡礼の旅に出ました。この旅は、単なる巡礼だけでなく、イスラム教の知識を深めるためのものでもありました。彼は、広州から海路を通り、メッカに至るまでの間、イエメン、バグダード、ダマスクス、カイロなど、イスラム世界の主要な都市を訪問しました。これらの地で、彼はフフィーヤを含む様々なスーフィズムの学派に触れ、その教えを深く学びました。この巡礼は、彼の後の活動に大きな影響を与えることになります。

1734年に帰国した馬来遅は、その知識と経験を活かし、イスラム教の普及に尽力しました。当初は循化などのモスクで教長を務めていましたが、彼の教えを求める人々が各地から集まるようになり、その活動範囲は広がっていきました。馬来遅自身も、雲南省、河南省、陝西省など、中国各地のモスクを積極的に訪問し、講学を行いました。その結果、彼の説くフフィーヤの教えは、回民（中国のイスラム教徒）の間で広く受け入れられるようになりました。馬来遅の努力によって、フフィーヤは中国のイスラム教における重要な学派の一つとして確立し、その影響は今日まで続いています。

馬来遅は、単なる宗教指導者としてだけでなく、イスラム教の教えを深く理解し、それを実践した学者としても尊敬されています。彼の生涯は、イスラム教の知識を深め、それを広めることの重要性を示しており、その足跡は、中国のイスラム教の歴史において重要な一章を刻んでいます。

参考文献として、白寿彝主編の『回族人物志』（寧夏人民出版社）が挙げられます。この文献は、馬来遅のような歴史上の人物の生涯や業績を詳細に記述しており、彼の業績をより深く理解するのに役立ちます。

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