駒井徳三

駒井徳三：満洲国を支えた官僚と教育者

駒井徳三（こまい とくぞう、1885年6月10日 - 1961年5月13日）は、満洲国国務院の初代総務庁長官を務めた人物です。彼は単なる官僚に留まらず、教育者としてもその才能を発揮し、激動の時代を駆け抜けました。その生涯は、満洲国の成立と発展、そしてその後の日本の歴史に深く関わっています。

生い立ちと中国への憧憬

駒井徳三は、滋賀県で医師の息子として生まれました。幼少期から日清戦争の影響を受け、中国への関心を抱くようになります。京都府立二中時代には、杉浦重剛の塾で中国への憧憬を深め、宮崎滔天の著作に感銘を受け、「支那研究」への情熱を燃やしました。周囲の反対を押し切って札幌農学校に進学し、卒業論文では「満洲大豆論」を取り上げ、満洲への関心をさらに深めました。

南満洲鉄道での活動

札幌農学校卒業後、駒井は南満洲鉄道に入社し、満洲各地を精力的に歩きました。その中で、公主嶺の農事試験場の建設に携わり、東部内蒙古での理想郷建設を試みました。この活動を通じて、于沖漢や張景恵といった地元有力者との交流を深めました。しかし、満鉄が政争の道具に使われる状況に不満を抱き、副社長との激論の末に辞職し、中国を放浪する旅に出ました。

外務省嘱託と中国への理想

中国放浪後、駒井は外務省の嘱託として勤務し、局長を補佐しました。この間、かつて満鉄を辞職した際に支援してくれた早川千吉郎を裏から支え、「東亜勧業公司」や「満洲紡績会社」の創立に貢献しました。また、南通州の有力者・張謇とも連携し、彼の事業整理を支援するなど、中国への理想を実現するための活動を行いました。

郭松齢との連携と挫折

1925年、駒井は東三省保境安民主義を掲げる郭松齢を支援し、張作霖政権の転覆を試みますが、これは失敗に終わりました。この事件で日本の政府官辺が張作霖を支持したことに失望し、駒井は大陸を離れて熱海で隠居生活を送りました。

満洲国への復帰と要職

満洲事変後、駒井は再び満洲問題に関与することになります。参謀本部の和知鷹二少佐からの意見を求められたことを機に、満洲行きを決意し、関東軍の財務顧問として大陸に渡りました。満洲国建国後は、国務院総務庁長官、参議府参議といった要職を歴任し、新国家の基盤作りに尽力しました。

教育者としての側面

満洲国では、人材育成にも力を注ぎ、大同学院の院長として官吏の育成に努めました。退官後は、兵庫県に私塾「康徳学院」を設立し、大陸で活躍できる青少年の教育に励みました。さらに、大阪の興亜時習社でも校長を務め、多くの若者を育てました。これらの教育活動は、駒井の人生において重要な位置を占めています。

戦後と晩年

太平洋戦争終戦後、駒井はGHQからの出頭命令を受けましたが、戦犯とは認定されませんでした。しかし、満洲国での要職経験から公職追放となり、実業界に転身しました。その後は、富士山麓の開発に携わり、新たな人生を切り開きました。1961年、75歳でその生涯を閉じました。

逸話と家族

駒井徳三には、いくつかの逸話が残っています。娘の麻田満洲野によれば、羊肉料理「ジンギスカン」の名付け親であり、娘婿の会社「ミノファーゲン製薬」の名付け親でもあったといいます。また、大同学院院長時代に満洲建国大学を起案したとも語られています。家族としては、舞踏家の麻田満洲野、眼科医の久子（今井通子の母）、そして宇都宮徳馬を婿に持つ遼子という3人の娘がいます。

栄典と親族

駒井徳三は、その功績により勲三等旭日中綬章を受章しました。

駒井徳三の生涯は、満洲国という特殊な状況下で、理想と現実の間で葛藤しながらも、自らの信念を貫き通した人物の姿を伝えています。彼の業績は、今日の私たちにとっても多くの教訓を与えてくれるでしょう。

もう一度検索