駒岡 (札幌市)

札幌市南区に位置する地域名、駒岡（こまおか）。この地域は精進川に沿った丘陵地帯に広がり、行政上の区分では真駒内に属する部分が大半を占める一方、北部の一部は澄川に含まれています。地域全体の面積の多くは山林が占めており、その中にいくつかのゴルフ場が点在しています。

歴史

駒岡の地は、かつて札幌市南区の広大な土地利用の歴史の中で、真駒内種畜場の一部として牛馬が放牧される場所でした。第二次世界大戦が終結した1945年（昭和20年）、日本の敗戦に伴い、この土地は連合軍、特にアメリカ軍によって演習場として接収されることになります。

戦後、海外からの引き揚げ者たちは、新たな生活の地を求めてこの地域に目をつけました。彼らはアメリカ軍との交渉を重ね、緊急開拓地としての認可を得ることに成功します。そして1947年（昭和22年）、「真駒内開拓団」と名乗る人々が入植を開始しました。彼らは一切の資産を持たない状態からのスタートでしたが、厳しい環境の中で製炭業、酪農業、畑作などに取り組み、地域コミュニティを形成していきました。やがて農業協同組合を設立し、精進川の豊かな水流を利用した水力発電による自家用電力を完成させるなど、自給自足に近い生活を築き上げていきます。

地域の発展に伴い、教育施設の必要性が高まりました。1949年（昭和24年）に小学校が新設されることになった際、建設地が真駒内地区と西岡地区の境界に近い場所であったことから、両地区名から一文字ずつを取り「駒岡小学校」と命名されました。この小学校の名称が定着したことを契機に、それまで特定の地名がなかったこの一帯全体を指す名称として「駒岡」という呼び名が使われるようになったとされています。

しかし、新たな試練が訪れます。1950年（昭和25年）に勃発した朝鮮戦争の余波は、遠く離れた駒岡にも及びました。アメリカ軍による実弾演習が激しさを増したため、地域住民の安全が脅かされる事態となります。これにより、一部の開拓者は土地を再びアメリカ軍に買い取られて離農せざるを得なくなり、開校したばかりの駒岡小学校も精進川沿いのより安全な場所へと移転を余儀なくされました。

状況が改善に向かうのは、1954年（昭和29年）にアメリカ軍から基地用地が日本に返還されてからのことです。土地利用の自由度が増し、1964年（昭和39年）には駒岡団地が造成されるなど、徐々に宅地化が進展していきました。

施設

地域内には、札幌市立駒岡小学校、札幌市駒岡清掃工場、札幌市保養センター駒岡などの公共施設が存在します。

交通

駒岡地区における唯一の公共交通機関は、北海道中央バスが運行する「駒岡線」です。この路線は全長8.1キロメートルで、札幌市営地下鉄南北線の真駒内駅を起点とし、恵開拓記念碑前までの間に設けられた14の停留所を結んで運行しています。

普段の利用客数は1便あたり数名程度と少ない傾向にありますが、札幌市立駒岡小学校は、学区外からの通学も認められている小規模特認校であるため、登下校時にこの駒岡線を利用する児童が多く見られます。

しかし、近年、バス運転手の不足が深刻化する中で、駒岡線は2025年（令和7年）3月末をもって廃止されることが決定しました。これに伴い代替交通手段の検討が進められた結果、同年4月1日からは札幌ばんけい（ばんけいバス）が運行を引き継ぐことになりました。運行便数は減少することとなりましたが、停留所の数や運賃体系は従来通り維持される形で継承されています。

もう一度検索